越境ECとは?越境ECを展開するメリットとデメリットは?実例を交えて解説!
越境ECとは
越境ECとは、ウェブを通じて海外の消費者に直接商品を販売するビジネスモデルのことである。なお、相手国の販売会社を通じた商品販売は越境ECに含まないが、相手国ECサイトへの出店・出品を通じた販売は越境ECに含まれる。
伸び続ける越境EC
経済産業省の「令和2年度電子商取引に関する市場調査」によると、日米中の3か国間をまたいだ越境ECの市場規模は、中国で4.3兆円(うち日本からの購入は1.9兆円)、米国で1.7兆円(うち日本からの購入は1兆円)に達する。越境ECによって日本企業が受ける恩恵は大きい。なお、日本の市場規模は4000億円で、米中に比べると圧倒的に小さい。
越境EC市場は、急速に拡大している。2019年に8000億ドルだった市場規模は、2026年には4.8兆円にまで伸びると予測されている。
なぜ越境ECはここまで伸びるのだろうか。その要因は世界的なEC化率の上昇、中国をはじめとする中所得層の増大、プラットフォーマーの台頭、越境ECへの認知向上、グローバルな物流インフラの拡充などと考えられ、これらが越境ECの追い風となっているようだ。
多様な越境ECの取引形態
越境ECには、国内での自社サイト(多国語対応)運営、現地のプラットフォーマーを通じた出品、現地における自社サイト運営など、さまざまな取引形態がある。
越境ECのメリット
越境ECのメリットは、市場開拓に必要な時間・マンパワー・コストにある。よほど力のある企業でなければ、海外における直営店舗展開は不可能だ。代理店やフランチャイズ方式にしても適切なパートナー選びは難しく、下手をすればブランド毀損などを招きかねない。
その点越境ECなら、実店舗を通さない販売が可能なうえに、自国からブランド訴求なども発信できるのは大きな魅力だ。
越境ECのデメリット
越境ECのデメリットは言語・決済・規制の3つの壁にある。
まず、ECサイトのコンテンツはすべて翻訳しなければいけない。翻訳は業者に任せるとしても、運営者は基本的な内容は理解しておく必要がある。
決済ルールも国・地域によって異なることが多いので、複数の決済手段を用意しておく必要がある。
現地規制も、とくに中国は当局による規制が頻繁に変わり、さらに地方政府によってルールが異なることも多いので注意が必要だ。
越境ECの実例
越境ECの実例として、化粧品メーカーの越境ECに対する取り組みについて紹介する。
2019年まで化粧品メーカーの業績を支えてきたインバウンド(訪日外国人)は、新型コロナ禍で一気に消失した。緊急事態宣言に伴う外出自粛や女性のマスク着用による販売減もあり、多くのメーカーが苦境に陥った。
頼みの綱は、いち早くコロナ禍から回復した中国市場だが、今から販売チャネルを拡大するのは簡単ではない。切り札は、越境ECをテコとした市場拡大だ。訪日観光客からのお土産効果もあって、日本の化粧品のブランド力は中国に相当程度浸透している。せっかく定着した「日本ブランド」を活かしつつ、京東(JD.com)、アリババなど巨大な集客力を誇るECモールを通じて売り込もう、とメーカーは考えている。
ライブ配信とオンライン販売をミックスさせたライブコマースも、越境ECの市場拡大に一役買う。リアルタイムによる配信によって配信サイドと視聴者が時間を共有できること、チャットを使った双方向コミュニケーションが可能なことが、ライブ配信の大きな魅力だ。肌に使う商品であるだけに、ECを通じた化粧品購入に抵抗を感じる層も多い。ライブコマースはリアルタイム配信と双方向コミュニケーションを通じ、顧客の不安を拭い去ってくれるのだ。
4兆円と言われる中国の化粧品市場だが、欧米や韓国勢も入り乱れ競争は厳しい。日本からの越境ECに限っても資生堂・花王といった大手だけでなく、アクシージアといった新興も勢いを伸ばしている。生き残るのは簡単ではなさそうだ。