ドミナント出店とは?なぜ同じコンビニが近くにあるの?その理由を徹底解説!

読み方:どみなんとしゅってん
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ドミナント出店とは

ドミナント出店とは、一定のエリアに出店を集中させ、競合を圧倒するチャネル戦略の1つである。別名は「高密度集中出店」、時に「絨毯爆撃」などと多少の皮肉を込めた表現がなされることもある。ちなみにドミナント(Dominant)には、支配する・威圧する・優位を占める、といった意味がある。

セブンイレブンのロゴ
昔からドミナント出店を基本戦略としてきたのが、コンビニエンスストアの雄セブン-イレブン・ジャパンだ。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 昔からドミナント出店を基本戦略としてきたのが、コンビニエンスストアの雄セブン-イレブン・ジャパン(東京都)だ。今では店舗数2万を超える同チェーンだが、1974年5月の1号店「豊洲店」(東京都江東区)のオープン以来、しばらくは「江東区から出るな」に徹してきた。

 全国展開においても、47都道府県にまんべんなく出店してきたわけではない。ラストとなった沖縄県に進出したのは、なんと2019年のことだ。人口10万人当たりの店舗数でも、最多となる山梨県は最少の高知県のなんと4倍だ。

 セブン-イレブン・ジャパンのこのやり方は長いこと邪道とみなされてきた。しかし今では、コンビニエンスストア・ドラッグストア・居酒屋や外食チェーン・ホテルチェーンなど多くの業態でドミナント出店が導入されている。

ドミナント出店のメリット

メリットのイメージ
ドミナント出店のメリットには、商品供給・販促活動や物流インフラ等の効率運用、消費者への浸透、競合の排除などが考えられる。

 ドミナント出店のメリットには、商品供給・販促活動や物流インフラ等の効率運用、消費者への浸透、競合の排除などが考えられる。

 特定地域に店舗が集中していれば、本部担当者も各店舗を回りやすい。さらに、エリア内に独自の専用工場や物流インフラをつくることができ、無駄の少ない配送計画を組むといった施策も打ちやすい。

 ひいては品ぞろえの充実・間断ない棚補充・タイムリーな販促キャンペーンなどを通じて顧客満足度を高めることができる。消費者も、商品やサービスが充実している店が近くにあるのなら、自然にそちらに足が向く。結果として競合を排除できるというわけだ。

ドミナント出店のデメリット

 ドミナント出店のデメリットは、同業他社との過当競争、1店当たり売上高の低下、エリア内店舗同士の足の引っ張り合い等がある。

 ドミナント戦略は成功すればライバルを圧倒できるが、あくまで「相手が黙って引き下がれば」の話だ。たとえばビジネスホテル大手のAPAグループ(東京都)は頂上戦略(SUMMIT5)と銘打ったドミナント出店を新宿・池袋・浅草・品川エリアで展開してきたが、同業大手も追随した結果立地競争が過熱した。

 同業他社が入ってこなくても、同じ店舗間でのカニバリ懸念は残る。ドミナント出店で全体の売上が増えても、商圏での売上規模が劇的に増えない限り一店当たり売上高は落ちる可能性が高いからだ。直営店舗なら大きな問題とはならないが、フランチャイズの場合オーナーにとっては切実な問題だ。

ドミナント出店の実例

 ドミナント出店の実例として、霧島酒造(宮崎県)の取り組みを紹介する。宮崎県の焼酎メーカー、霧島酒造が「黒霧島」を発売したのは1998年だ。当時、同社は一地方の焼酎メーカーにすぎなかった。しかも黒霧島は「においがきつい」と敬遠されがちな芋焼酎、さらにはアルコール離れと悪条件がそろっているなかで、なぜ急成長できたのか。もちろん商品が優れていたのはもちろんあるが、もう1つの成功のカギは「横展開式」ドミナント出店だ。

 霧島酒造の首都圏進出は1980年代だが、しばらく不遇の時代が続いた。そこで「黒霧島」では首都圏を避け、まずは福岡に進出した。競争が激しくマーケティングコストもかさむ東京と違って地方都市は比較的おさえやすい。福岡で一定の成果を収めた同社は、成功体験をバネに広島さらには仙台に進出した。こうして地方都市を次々攻め落とし、最後には東京を攻略することに成功した。

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