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自動車に恩恵、食品は懸念=円安の影響、業種で明暗

東京都内のスーパーで、商品を手に取る買い物客
〔写真説明〕東京都内のスーパーで、商品を手に取る買い物客=19日(AFP時事)

 円安の進行が企業業績に与える影響は、業種によって分かれる。2024年3月期連結決算では、自動車など海外販売比率が高い業界にはプラスに働く一方、原材料調達を輸入に頼る食品・外食業界などでは収益の圧迫要因として懸念する声が強まった。急激な為替変動は経営の安定性を揺るがすだけに、各社は円安の行方を注視している。

 営業利益が日本企業で初めて5兆円を突破したトヨタ自動車は当初、24年3月期の為替レートを1ドル=125円と想定していた。しかし、実績は145円と大幅な円安になり、営業利益を6850億円押し上げる要因となった。収益の増加を「持続的な成長の足場固め」(佐藤恒治社長)につなげる好機と位置付け、今期は電気自動車(EV)や車載ソフト開発などに2兆円投資する。

 観光需要回復にも円安は追い風となる。JR東日本の純利益は、前期からほぼ倍増。今期は「インバウンド(訪日客)も増加を見込んでいきたい」(伊藤敦子常務)と利益の上積みを目指す。

 原材料の輸入依存度が高い業種では、円安の負の側面が大きくなりやすい。居酒屋大手ワタミの渡辺美樹社長は、食材の7割以上を輸入で賄っていると説明した上で、「円安の影響は非常に大きい。国内(外食産業)の生き残り競争が始まる」と危機感を示す。明治ホールディングスの川村和夫社長はチョコレート原料となるカカオ豆の調達費用について、「2倍から3倍(に)高騰を続けており、これだけでは収まらない可能性がある」と懸念する。

 三菱商事の中西勝也社長は円安について、事業全体では増益要因とする一方、「海外でM&A(合併・買収)を行う際には値段が上がってしまう」と述べ、海外投資拡大には逆風だと指摘した。