国土交通省が公表した2024年の公示地価は、都市部を中心に全国的に上昇傾向が続き、コロナ禍後のインバウンド(訪日客)や人流の回復による経済活動の順調な回復を印象付けた。一方、自然災害や人口減少の影響で下落に歯止めがかからない地域もあり、明暗が分かれている。
国内外の観光客に人気がある東京都台東区浅草の商業地では、コロナ禍の21年に12.2%の下落を記録したが、行動制限の緩和・撤廃により徐々に回復。今回17.8%上昇し、初めてコロナ前の20年の価格を上回った。飲食店が並ぶ札幌市の繁華街ススキノの商業地も17.2%の高い上昇を見せ、コロナ前の価格を超えた。
国交省の担当者は「三大都市圏や地方4市の多くの地点では、コロナ禍前の価格を上回っている」と指摘。コロナによる影響はほぼ解消されたとみている。
4市以外の地方圏でも、県庁所在地を中心に上昇傾向が続く。福井市は戸建て住宅の需要が堅調で、31年ぶりに住宅地が上昇に転じた。商業地も北陸新幹線延伸に伴う福井駅周辺の活性化に期待が高まり、上昇率は前年から大きく拡大した。23年8月に次世代型路面電車(LRT)が開通した宇都宮市では、住宅地、商業地ともに沿線の人気が高まっているという。
ただ4市以外の地方圏を地点別に見た場合、上昇したのは全体の41.3%、下落したのが39.8%で、割合は拮抗(きっこう)。被災地や、コロナに関係なく人口減少や過疎化が進む地域では、地価回復の流れが行き届いていないのも実情だ。
今回、商業地で最も下落率が高かったのは、石川県珠洲市の地点。同市などに大きな被害をもたらした1月の能登半島地震の影響は反映されていないが、人口減少が進んでいた上、近年の活発な地震活動により、もともと弱含んでいた需要がさらに減退したとみられる。
他にも、下落率の上位地点には能登半島の被災地が並んでおり、来年以降はさらなる下落も懸念される。