メニュー

消費、投資が停滞=内需の弱さ懸念―成長へ賃上げカギ・7~9月期GDP〔潮流底流〕

スーパー、アキダイの店舗
〔写真説明〕節約志向を強める消費者=13日、スーパー、アキダイの店舗(東京都練馬区、時事通信社)

 2023年7~9月期の実質GDP(国内総生産)は年率2.1%減と3四半期ぶりのマイナス成長となった。物価高騰を背景に、個人消費と設備投資がともに2期連続の減少と停滞し、内需を支える2本柱の弱さに懸念が広がる。成長へのカギを握る消費の力強い回復には来年の春闘で物価上昇を上回る賃上げを実現できるかが焦点となりそうだ。  

 ▽期待外れの消費  「お客さんの生活防衛意識は高まっている」。スーパー、アキダイ(東京)の秋葉弘道社長は厳しい表情で語る。最近はその日安い商品で献立を考える客が増えた。野菜の仕入れ価格が全般的に上がり、物流費や電気代もかさんでいるが、消費者の購買意欲を考えるとすべてを価格に転嫁できない。秋葉社長は「今は我慢の時」と話す。

 7~9月期の成長率は民間シンクタンク10社の事前予測(平均年率0.6%減)を大きく下回った。個人消費は、コロナ禍からの回復で小幅ながらプラス成長が見込まれていただけに、期待外れとなった。物価の変動を反映させた実質賃金は18カ月連続マイナス。物価高に賃金が追い付かず、消費を下押しする構図から抜け出せない。農林中金総合研究所の南武志理事研究員は「個人消費を中心に景気の足腰は弱い」と分析する。

 ▽企業、投資に慎重  内需のもう一つの柱、設備投資もさえない。デジタル化などへの企業の投資意欲は根強いが、建設資材の価格高騰などコスト増加で思うように投資できていない可能性がある。「工作機械事業は設備投資への慎重姿勢が広がる中、全体的に市況低迷が継続」(シチズン時計)、「顧客の(半導体関連の)投資は市場見合いの様相が強い」(東京エレクトロン)など、企業の見方も厳しい。

 外需は、半導体不足の緩和で自動車輸出が増加した一方、輸入が増え全体ではマイナスに寄与した。「中国の内需低迷や欧州の金融引き締めで世界経済の減速が非常に強い」(JFEホールディングス)と先行きに対する警戒感が広がる。

 ▽賃上げ継続がカギ  現時点で10~12月期はプラス成長に復帰する見通しだ。そのためには内需拡大が欠かせない。政府は2日に決定した総合経済対策で、所得税減税や低所得者向けの給付金を盛り込んだが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「節約志向の高い現状では、経済の押し上げ効果は限定的」とみる。

 行方を左右するのは来年の春闘での賃上げだ。今年は平均賃上げ率3.58%と30年ぶりに高い水準を達成した。小林氏は「2年連続でここまでの賃上げ水準は厳しいが、来年も含め賃上げの継続が重要だ」と指摘している。