政府は2日、物流の「2024年問題」対策の政策パッケージを公表し、インターネット通販などの「送料無料」表示見直しに取り組む方針を打ち出した。運送事業者が輸送コストに見合う適正な運賃を得られる環境を整備するためだ。実現には消費者の理解が課題となりそうだ。
「『送料無料』じゃありません!」。全日本トラック協会はネット広告などで輸送コストの存在を訴え続けてきた。商品の送料無料を売りにする通販事業者は多いが、協会の担当者は「実際には送料は商品に含まれている。『無料』の表示で物流が軽んじられている」と指摘。政府の方針を「前進だ」と歓迎する。
トラック運転手の時間外労働への上限導入で人手不足や物流停滞が懸念される24年問題では、輸送運賃を適正化し賃金水準を向上させることが主な対策の一つとなる。ただ、トラック運送事業者の9割は中小企業が占め、荷主企業に対する運賃交渉力は弱い。
燃料や資材費も高騰する中、運賃へのコスト転嫁を認めさせるには「荷主企業の向こう側にいる消費者にも物流コストを理解してもらう必要がある」(トラック協会)と焦燥感を募らせる。
一方、通販業界は、無料表示の大幅見直しへの慎重姿勢が根強い。業界団体の日本通販CRM協会の向徹代表理事は「無料表示がスタンダードになっており、『有料』にして売れなくなる怖さがある」と強調。見直しが進むかどうかは「消費者に受け入れられるか次第だ」と語る。
政府は「業界と話しながら、どういうやり方が適切か検討する」(国土交通省)としており、具体化はこれからだ。どれだけ強制力のある対策を講じるかも焦点となる。