日本と米国が半導体サプライチェーン(供給網)の強化で合意したことは、長らく続いた衰退傾向からの再興を狙う日本の半導体産業にとって転機となりそうだ。政府は従来の「日の丸半導体」単独で生き残りを目指す戦略を転換。基本的な価値観を共有する米国や台湾など同志国・地域との連携による産業競争力強化にかじを切った。
1988年に50%を誇った日本企業の半導体シェアは2019年に10%程度まで落ち込んだ。しかし近年は、米国と中国の貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻を背景に、経済安全保障上、先端技術に不可欠な半導体の安定調達の重要性が高まっている。
バイデン米大統領は、先に訪問した韓国とも半導体供給網の強化で合意した。23日の日米首脳会談後の記者会見では、世界的な半導体の生産拠点でもある台湾の防衛に関与することを明言。日韓台との「半導体同盟」で、供給網の脱中国依存を進める構えだ。
日本政府も既に、海外メーカーの生産拠点誘致に乗り出している。受託製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は昨年、熊本県での工場建設を発表。ソニーグループや自動車部品大手デンソーも資本参加を表明し、政府は補助金で支援する見通しだ。
経済安全保障の観点から半導体の安定確保を重視する声は自民党内にも根強い。半導体戦略推進議員連盟の事務局長を務める関芳弘衆院議員は取材に対し、国際的な半導体供給網について「集団安全保障の考え方で強化しないといけない」と指摘している。