【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会は16日、2022年のユーロ圏実質GDP(域内総生産)が前年比2.7%増になるとの見通しを示した。ロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響でエネルギー価格の高騰や供給制約などの逆風がさらに強まったことを踏まえ、2月公表の前回予想(4.0%増)から大幅に下方修正した。
23年も2.3%増(前回2.7%増)に引き下げた。戦闘が長期化する中、新型コロナウイルス禍からようやく回復してきた欧州経済に再び先行き不透明感が高まっている。
ジェンティローニ欧州委員(経済担当)は記者会見で「非常に不確実性が高く、成長率が予測より低下し物価は上昇するシナリオもあり得る」と指摘。仮にロシアから欧州への天然ガス供給が完全に途絶えれば、22年のユーロ圏成長率が0.2%程度まで落ち込む可能性があるとの分析も示した。
主要国別の22年の成長率見通しは、フランスが3.1%(3.6%)、イタリアが2.4%(4.1%)、ドイツが1.6%(3.6%)と、いずれも下振れ。特にドイツは中国のロックダウン(都市封鎖)も輸出や製造業への打撃となると見込んだ。
一方、22年のユーロ圏の物価上昇率は、エネルギーや食品価格を主因に6.1%に加速すると見込み、前回予想(3.5%)から大幅上方修正した。ただ、23年には2.7%へ鈍化するとみている。
◇ユーロ圏GDP成長率予想
2022年 2023年
ユーロ圏 2.7(4.0) 2.3(2.7)
ドイツ 1.6(3.6) 2.4(2.6)
フランス 3.1(3.6) 1.8(2.1)
イタリア 2.4(4.1) 1.9(2.3)
EU全体 2.7(4.0) 2.3(2.8)
(注)上昇率、単位%。カッコ内は2月公表の前回予想