事業停止企業、困惑広がる=ロシアが資産差し押さえ警告―実現性は疑問視
ロシアのプーチン大統領が、ロシア事業の停止や撤退を決めた外国企業の資産を事実上差し押さえる可能性があるなどと警告した。ウクライナ侵攻の影響で、ロシアでのビジネス停止が相次いでいる日本企業は、情報収集に動きだした。企業は米欧日の制裁とロシアによる報復の連鎖を不安視。強硬手段の可能性に困惑が広がる一方、実現性には疑念も抱いている。
現地での部品調達が難しくなり、トヨタ自動車や日立製作所がロシアでの生産停止を決めた。カジュアル衣料の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも事業停止を発表。ロシア事業の継続に国際社会から厳しい目を向けられかねないことも背景にあるとみられる。
プーチン氏は資産差し押さえに加え、ロシア側が経営権を取得する可能性があるとも警告。工場の稼働停止を決めた企業は、部品調達難が理由で一時見合わせた場合も対象になるのかなど「(ロシア側が)どのように判断するのか分からない」(建機大手)と戸惑う。
日本の官民がロシア企業などと共同出資で手掛ける石油・天然ガス開発事業「サハリンプロジェクト」に関しては、より難しい判断を迫られる。米欧の資源メジャーが撤退を発表したが、日本の場合、エネルギー安全保障に深く関わる。このため、ロシア側による資産の差し押さえなどを想定すると、「撤退とは言いにくくなる」(大手商社)との声が漏れる。政府関係者も「権益を手放せば、ロシアを利するだけだ」と強調する。
一方、日本企業からは実現性を疑問視する声も上がる。自動車大手関係者は、仮にロシア側が強引に経営権を取得しても「部品のサプライチェーン(供給網)が寸断された状態で、工場をまともに稼働できるのか」と語る。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「現時点では制裁に対する脅しの一種で、現実味は高くない。日本企業はしばらく様子を見るしかない」と指摘している。