3月8日、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下ライフ)は、EC垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を展開する10X(東京都/矢本真丈社長)と協業し、「ライフネットスーパー」のモバイルアプリ「ライフネットスーパー アプリ」の提供を開始すると発表した。
ネットスーパーの売上高50億円、しかしシステムは10年前のまま
2011年、ネットスーパーを立ち上げたライフは現在、全国278店舗のうち61店舗(21年2月末時点)でネットスーパーを展開している。コロナ禍でのEC需要の高まりを受けて、ネットスーパーの既存店売上は月次平均で昨年比約150%まで伸長。20年度のEC売上総額は50億円を達成するペースにまで成長した。
しかし、現在のECシステムは立ち上げ当時のものをそのまま使用しており、「10年前といえば、まだ十分にスマホも普及していなかった時代。その当時のシステムのままでは次の時代に対応できないと判断した」とライフ CX共創推進室室長 加藤崇氏は「Stailer」導入の理由を語った。今回のモバイルアプリのリリースによって、オンラインとオフラインの垣根を超えたシームレスな購入体験の提供をめざす。
多店舗EC垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer」とは
今回、ライフが協業を発表した10Xは、17年にレシピ検索・閲覧からそのまま食材の注文までが行えるアプリ「タベリー」で創業した企業だ。タベリー自体は20年にサービスを終了したものの、そこで得たノウハウを生かして新たに開発したのが「Stailer」である。
「Stailer」は、チェーンストア向けの多店舗EC垂直立ち上げプラットフォームで、最大の特徴は、顧客、小売本部、店舗、配送業者それぞれに向けたオペレーティングシステムを一括して提供することができる点だ。例えば、顧客向けシステムとして購入アプリを、店舗向けには在庫管理やピックアップ作業を行うアプリを提供する。これらのシステムの全てを10Xが一括して自社開発するため、スムーズな連携や各チェーンに合わせた細かいカスタマイズの容易さが強みだ。
今回ライフが導入するのは「Stailer」のうち顧客向けの購入アプリのみ。同アプリは既に、国内ネットスーパー最大手であるイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)、広島県を中心にSMを展開するフレスタ(広島県/谷本満社長)などが導入しており、購入頻度や訪問継続率、翌月購入継続率などの引き上げに成功している。
買い回りやすさを重視したアプリ
「ライフネットスーパーアプリ」の特徴は、「野菜」「お肉」など実際の売場のカテゴライズとリンクしたページを、横スライドで順番に見て回れるようにしたことだ。これによってユーザーは、実店舗で買い回る時と同じようなイメージでアプリ内を巡回することができるという。UI自体もブラウザ版と比較して、画面上部のバナーや「お知らせ」を無くしすっきりさせ、その分表示される商品の数を増やして一覧性を高めた。
また、個別の商品ページ下部には、その商品を使用したレシピを掲載。もちろん、レシピ内から他の食材もそのままカートに入れることが可能だ。そのほか、繰り返し購入する食材を手早く購入できる「マイリスト」や、購入履歴からの再購入を容易にするなど、“普段使い”をイメージした工夫を盛り込んだ。また、ライフネットスーパーが一部店舗で導入している、一定期間送料が無料になる「使い放題チケット」なども引き続きアプリから利用できる。
今後の課題は“品揃え”
またライフでは、自社ネットスーパーと並行してアマゾンでもECストアを展開しているが、「アプリの導入やシステムの刷新に関係なく、今後もこの併走状態は続けていく」(加藤氏)という。その理由は、自社ネットスーパーのユーザーがもともとその実店舗の顧客であるのに対し、アマゾンで購入するのはもともとライフの顧客ではない層が多く、“住み分け”ができているからだ。自社サービスとアマゾン側とでの配送エリア重複なども意識せず、それぞれがサービスを拡大していく方針だ。
今後の課題として加藤氏は、実店舗の品揃えに比べ、ネットスーパーの品揃えにまだ制限が多いことをあげた。「ネットでもリアルでも、気にせず欲しい商品に触れてもらうためには、品揃えを同じにしなければならない」(加藤氏)。実現のためにはリアルタイム性の高い在庫管理が必要になるが、10X代表取締役 矢本真丈氏は、「立ち上げの手間を最小限にし、その分UXの作り込みや在庫管理といった細かい要望に答えやすいのが『Stailer』の強み。在庫の即時管理は解決すべきことも多いが、(ライフ側と)一緒に取り組んでいければ」と意欲的に語った。
ライフは2021年度、20年の約2倍に当たるEC売上高100億円を目指す。10Xとの協業のために、加藤氏が室長を務めるCX共創推進室を21年2月に設置するなど、ライフ側のEC改革にかける熱意は高い。加藤氏は「(10Xは)現場の仕組みや思いをよくわかってくれている。ただ単にアプリを導入するためだけのパートナーではなく、事業パートナーとして今後も協業していきたい」と締め括った。