メニュー

2022年の小売業界を振り返り! 注目すべき3つの変化とは

昨今のコロナ禍におけるステイホームの影響で、小売業界のデジタル化も一気に加速したと言われています。私の著書でも「2022年は時計の針が5年進んだ」「2025年が一気に来た」と表現しました。そんな2022年、実際に小売業界で起こったことを振り返ってみると、消費活動に具体的にどのような変化があったのでしょうか。本記事から2回続けて、2022年の総括と2023年に予測される小売業界の変化について考えてみましょう。

Parradee Kietsirikul/iStock

SNSへの広告投資が増加

 私の著書では「インターネットでモノを買うようになっても、オフラインの消費はなくならない。しかしその性質は変化する。それがコロナでたまたま加速した」という内容をご紹介していますが、さらに深掘りして考えるために、2022年に起きた3点の変化に注目してみましょう。

2022年に起こった小売業界の変化

 1つめは「ECの利用ジャンルの拡大」です。現在コロナの影響は少し緩和し「ウィズコロナ」の状態にありますが、ステイホームの影響でECの利用が浸透し、それが定着してきた感覚は多くの方がお持ちだと思います。コロナ以前から、コスメや家電・アパレルなどではECの利用も多かったのですが、2022年はとくに食品ECがブルーオーシャン化するなど、これまで近所で購入したほうが早かったモノまでECを利用するひとが増えました。

 2つめは「広告媒体としてのSNS」です。SNSはとくに広告媒体としての活用が活発になっており、SNSYouTubeに力を入れていない企業の方が少ないくらい小売業界においてマストになりつつあります。TVCMをはじめとしたオフライン広告は全体的に予算削減が進んでいますが、原材料価格の高騰や円安の影響があったなかでも、デジタル広告予算の減少は見られませんでした。

 3つめは「DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの落ち着き」です。「DX」や「AI」といったバズワード化したトレンドは徐々に収まりつつあり、このまま進めば恐らく2023年になっても「DX」と言っている会社はかなり少なくなっているでしょう。最近参加した小売の展示会でも、DXAIは予算があるわりにすでにニーズが下がっており、メタバースやNFTARVRといった新たな分野に活気が集中していました。

EC化率はあくまで目安

  ステイホームの影響で、これまでECの利用経験がなかった人が必要に迫られ、すでにECを利用していた人も気付けば利用頻度や購入金額が増えるきっかけになりました。しかし、実は小売におけるEC化率を見てみると、コロナの影響が最も厳しかった際には少し上がったものの、実は2022年にはすでに元の推移に戻りつつあるのです。これは、もとからEC化率の高い中国を除き世界的にも同様の流れで、米国でもオンライン・オフライン共に利用比率に大きな変化は見られませんでした。この状態を私たちはどのように捉えるべきなのでしょうか。

EC化率は世界的に元に戻りつつある

 結論から申し上げると、ステイホームの影響は「EC利用が拡大した」というより「ECがより生活に浸透した」と捉える必要があるということです。経済産業省が出している統計データも、シンプルにEC化率を数字だけで評価することが難しくなっているのです。

 消費者は、消費に関係するプロセスでSNSECサイトを見て、注文はネットで行い、受け取りはリアルで行うなど、オムニチャネルが流行した際と似た現象が再び起こっています。これは、利用者が自分に便利なかたちで受け取っている結果であり、実際にはデジタルを経由しているにも関わらず、数字に反映されていないことも多く、公開されている統計データはあくまでも目安程度と捉える必要があります。

米国のデジタル経由売上は50%

  日本の先を行く米国では、すでに2018年の段階でEC化率12%に対しデジタルを経由した売上は50%を超えており、デジタルに対応できない店舗は大量閉鎖に追い込まれました。今後も影響が大きくなるであろう、「消費におけるデジタルが及ぼす影響=デジタルインフルエンス」について、日本の小売業界全体でもさらに注視する必要があるでしょう。

「デジタルインフルエンス」を注視していく必要がある

 コロナ禍の影響でDXへの投資が活発に行われた結果、小売業界のデジタル化そのものは大きく加速したものの、EC化率という数字そのものには大きな変化はありませんでした。しかし、デジタルが消費に与える影響は水面下で大きく膨らんでおり、その一端がSNS広告への投資として表面化した1年だったといえるでしょう。2023年は、これらの変化がより顕著に目に見えるかたちとして小売業界にも大きな変化をもたらすと考えられます。次回は、そんな2023年に注目すべき小売業界の動向についての予測をご紹介しましょう。