米ペット用品EC「チューイー」の愚直なデジタル戦略に注目すべき理由
アウトプット指標に捉われず、「イノベーションを生むインプット情報」を重視
セッションのメーンテーマである「企業成長と顧客中心文化のバランス」についてシンCEOは、「企業が成長すると起業時の使命、目的、顧客志向から規模の重要性、収益性、株主の”ご機嫌取り”が優先されるようになると、多くの企業は収益や利益といったアウトプットの指標を重視するようになるが、成長やイノベーションを生むインプットの情報に焦点を当てるべきだ」と言う。24時間365日対応のカスタマーサービスに力を入れるのも優れたインプット情報を顧客から直接得るためである。
これらの活動から生まれたイノベーションが、ペットの健康管理やペット保険などに関するサービスだ。残念ながら米国ではペットを最適なタイミングで獣医師に連れていけるケースは少ない。これは、診療・治療にかかる価格、動物病院の立地や数、獣医師のスキルなどさまざまな要因がある。
そこでチューイーは、動物医療をより安価で身近なものにする取り組みを開始した。1つは、自宅で獣医師の診療を受けられる遠隔医療サービスだ。チューイーのサブスクリプションサービスの会員には無料で、それ以外の顧客でも15ドル程度という手頃な価格設定とした。
またブログを介した情報発信にも力を入れている。顧客が家族であるペットの不調を感じたときに正しい判断ができるように、例えば「犬がノミを持っているか判断する10の兆候」といった具体的なテーマの記事を投稿している。
さらに現在は、ペット保険の”民主化”に取り組んでいるという。実は、アメリカではペット保険の加入率は2~3%しかない。チューイーは各種保険商品を簡単に比較検討できるようなサービスを立ち上げ、ペットとの生活をより安心で安全なものにしたいという。
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シンCEOは最後に、「今後数年間でペットのハードウエア、ペット・テック、データによる行動把握などのサービスが広がることが予想されており、より多くの”インプット情報”が入ってくる。顧客の声に耳を傾け、顧客体験とイノベーションというミッションに忠実であれば、これらをうまく使うことが可能で、多くの成長とチャンスが広がっている」と締め、セッションは盛大な拍手とともに終了した。
シンCEOの講演とチューイーの取り組みからは、あらためてDXとはデジタルが起点ではなく、顧客起点でビジネスを構築したうえでデジタルを活用していくこと」であると強く認識させられる。
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