ワークマンのアンバサダーマーケティング、報酬無償だから成果が出る理由 きっかけは溶接ヤッケ10万着の大ヒット

2021/08/13 05:55
    野澤正毅
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    広告宣伝、拡散効果を狙い、流通業界でも「企業アンバサダー制度」の採用が増えているが、中でも、ワークマン(群馬県/代表取締役社長 小濱英之)のアンバサダー制度は毛色が変わっている。アンバサダーに商品のサンプルや情報は提供するが、金銭的報酬を原則支払わないことで、商品に関する情報発信をアンバサダーの自主性に委ねているのだ。広告宣伝コストが抑えられる一方で、受け手に刺さる客観的な情報が発信されやすいといったメリットがある。同社のアンバサダーは、商品開発でも積極的に協力し、ヒット作も続々と生まれているという。

    ビギナーはネットやSNSで商品情報を調べる

    綿ヤッケ
    主に溶接現場で着用されている綿ヤッケ

     「アンバサダー」とは、英語で“大使”を意味するが、最近では、自社の商品やサービスを愛用する有名人を「企業アンバサダー」として起用、広告宣伝やブランディングに一役買ってもらう企業が増えている。SNSがコミュニケーションツールとして欠かせなくなった今、有名人による「デジタルの口コミ」が、大きな影響力を持つようになったからだ。そうした中、作業服専門店最大手のワークマンは、一般ユーザー向けの拡販を主目的に、一味違ったアンバサダーマーケティングで注目されている。

     同社の企業アンバサダー制度は、20197月にスタートした。担当する営業企画部販売促進グループマネージャーの丸田純平氏は、新たなマーケットとして、一般ユーザーの開拓に力を入れている理由を、次のように説明する。

     「当社は現在、全国に900店舗以上を展開しています。現場の職人さんなどのプロユースがメーンでしたが、1000店舗規模に拡大した段階で、プロ向け市場をほぼカバーできるようになってしまいます。それ以上の成長を図るには、一般向け市場にも目を向ける必要があります。例えば、当社の業務用商品は、キャンプや釣り、ツーリングといったアウトドアでも役立つので、市場開拓の余地があるわけです」。

     販売促進グループは、丸田氏を含めた専任スタッフが4人で、チラシやCM、カタログの制作、ファッションショーの企画などが主な担当業務だが、一般ユーザー向けのマーケティングも、重要なミッションだ。

     丸田氏が企業アンバサダーに目を付けたのは、あるアイテムの爆発的なヒットに、インフルエンサーが深くコミットしていたのを知ったからだった。

     「溶接のときに火花を避けるための綿素材のヤッケ(約1,900円/販売終了)は年間20003000枚の売上だったのですが、4000枚〜5000枚と販売数を伸ばしていきました。プロ向けだけで、そんなに売れるはずがありません。理由を調べたところ、サリーさんという女性のカリスマキャンパーが、そのヤッケを『たき火に最適』とブログに紹介してくれたのがきっかけで、そうした情報が拡散し、キャンパーたちの間で人気に火がついたことがわかりました。サリーさんにアンバサダーをお願いし意見をもらってリニューアル販売すると、2020年には10万枚を販売するヒット商品となりました」(丸田氏)。

     丸田氏が痛感したのは、ユーザーによる口コミが、通常の広告宣伝とは異質の威力を持っているということだ。

     「ユーザーの皆さんは、第三者の立場から発信しているので、情報が客観的で、それだけに説得力があり、受け手に刺さるんですね。それに、われわれが気づかない視点からも、評価してくれることが往々にしてあるんです。さらに、サリーさんをはじめ専門家であるアンバサダーは、写真の撮り方や投稿文も同社よりうまいんです」(同)

     そこで、丸田氏は、企業アンバサダーを制度化することを思いつき、サリーさんにも、初代アンバサダーに就任してもらうことにした。

     「当社の商品はビギナー向けが多く、かつリーズナブルという差別化のポイントがあります。初心者はまず、インターネットやSNSで商品情報をリサーチするケースが増えているので、企業アンバサダーは、当社のMDとも親和性が高いと考えました」と、丸田氏は振り返る。

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