サスティナブルとは?SDGsとの関連やファッションなどサステナブルを重視する実例を紹介!

読み方:さすてぃなぶる(Sustainable)
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環境に配慮した取り組みが欧州を中心に進んでおり、日本でも徐々に浸透してきている。そのようななか、最近なにかと耳にすることが多い「サステナブル」という言葉。今後ますます注目を浴びるであろう「サステナブル」についてこの機会にぜひ知って欲しい。

そこで本記事ではサステナブルとは何なのかという点や、サステナブルな取り組みにはどのようなメリットやデメリットがあるのかを解説し、サステナブルな取り組み実例についてもご紹介したい。

サステナブルとは?

トヨタ
トヨタの経営姿勢は、ステークホルダー(投資家・顧客・従業員・取引先・社会などの利害関係者)から高い評価を受けている。写真はトヨタのロゴ。都内で2017年2月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

サステナブルとは「自然環境に配慮した行動」を表現する際によく使われる言葉だ。現在、世界中の人々が共通の認識を持って取り組み始めているのが「サステナブルな社会の実現」である。まずはサステナブルという言葉の意味から解説したい。

サステナブル(Sustainable)の意味

サステナブルは「Sustain(維持)」と「Able(可能)」を組み合わせた言葉で、直訳すると「持続可能な」という意味になる。もともと英語圏ではごく一般的に使用されているワードであった。

近年では環境問題に限らずファッションや食品など幅広い分野に浸透してきており、ありとあらゆる分野でサステナブルという言葉が使われ始めている。今まではものを作るうえで使われる原料や製造工程が環境にどのような影響を与えているかについては深く考えられてこなかった。

しかし、サステナブルという言葉が浸透してきたことで、企業も環境への関心を無視することができなくなり、原料から製造・販売方法に至るまで、すべての工程で環境に配慮した物作りが主流となっている。

サステナブル(Sustainable)が生まれた背景

サステナブルという概念が、国際社会において初めて登場したのは1987年である。この年の国連で「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書のなかで初めてサステナブルという言葉が登場する。

その後、1992年にリオデジャネイロで開催された「地球サミット」でサステナブルという考えは広く浸透していくこととなる。終戦後、日本を含む先進国は高度経済成長を遂げてきたが、一方で公害や環境破壊は認識されていたものの、これまで見過ごされてきた。

しかし、このまま自然環境の破壊が続けばこの先の未来を生きる子どもたちへ遺恨を残すことが危惧された。そのため、地球環境への影響を最小限に抑えつつ、経済的な発展を遂げるためにどうすれば良いかが考えられるようになった。

そしてサステナブルが「環境と人々が共存していくための考え方」として認識されるようになり、サステナブルを考えることは今や常識となりつつある。

なぜ今、サステナブルが重視されるのか?

 資本主義社会において、企業の最優先課題は「収益目標」の達成であり、できるだけ多くの利益を株主に還元しなければならない。一方で企業は、顧客・取引先・従業員・地域や環境といった社会的インフラが健全、つまりサステナブルであってこそ活動を継続できる。

 環境悪化・格差拡大・公正の欠如といった社会問題は、社会全体のサステナビリティ(持続可能性)を損なう。サステナブル経営とは、「企業は社会の持続可能性に目を向けた経営を実践すべき」とする考え方だ。

 ではサステナブル実現のために、企業は何を基準に行動すればよいのか。決め手となるのがESGだ。ESGはEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の略称である。

 ESGは単に環境保全・利益の社会への還元・企業統治の向上をめざすだけではない。ESGの実践はブランドイメージの向上や企業リスク低減をもたらし、最終的には企業の持続的成長につながるというわけだ。

サステナブルのメリット

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サステナブルのメリットは、長期的な企業価値向上ができる点にある。Advantages and disadvantages

 サステナブルのメリットは、長期的な企業価値向上ができる点にある。

 自動車メーカーのトップ企業トヨタ(愛知県/豊田章男社長)は、コロナ禍で厳しい経営環境下にあっても、サプライチェーン維持のため資金的に苦しい取引先を支援し、従業員の雇用を守り、将来の成長に向けた開発投資を継続した。一方で、自社株買いなどの株主還元を一時的に抑える措置をとった。

 トヨタの経営姿勢は、ステークホルダー(投資家・顧客・従業員・取引先・社会などの利害関係者)から高い評価を受けている。サステナブル経営は短期的に利益を圧迫することはあっても、長期的には企業の競争優位を高め持続可能な収益向上につながると期待される。

サステナブルのデメリット

 サステナブルのデメリットは、必ずしも企業価値向上につながらない点にある。サステナブルは不可欠なのかもしれないが、それだけを一所懸命にやっていれば必ず企業価値が向上するわけでもない。

 2021年3月、食品のグローバル企業ダノンのエマニュエル・ファベール会長が株主総会で解任された。ダノン氏を引きずり降ろしたのは、アクティビストとしても著名なアーチザン・パートナーズおよびブルーベル・キャピタル・パートナーズとされている。

 ファベール会長のもとでダノンは、排出したCO2をコストとして組み入れた、炭素調整後EPS(EPSは一株当たり利益)による業績管理など、先進的な取り組みを推進してきた。ダノンは、まさにサステナブル経営の模範生だったのである。

 一方で、収益性を示すROE(自己資本利益率)や利益成長性を示すEPS伸長率において、ダノンは競合他社に見劣りする。株価が出遅れていたこともあり、投資ファンドの逆鱗に触れたというわけだ。

サステナブルの実例

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ここでは実際にサステナブルな考え方を取り入れている実例を紹介する。ファッションや食品だけでなくいろいろな分野でサステナブルな考え方が取り入れられていることがわかるだろう。

アパレル・ファッションとしてのサステナブル

近年、アパレル業界においてもサステナブルは強く意識されている。その理由としてアパレル業界で使用される原料は動物の皮や羽毛など天然物が多く、また染色などで化学薬品が多く使用されているからである。

アパレル業界と関わりの深い繊維業界は世界2番目の環境汚染産業といわれている。なぜならCO2の排出量が全体の10%を占め、大量の水を消費しているからだ。

ファストファッションと呼ばれる低価格帯の衣服は大量に生産される。一方でそのすべてが衣服として流通せずに大量に売れ残っているという事実もある。そして売れ残った衣服は新品のまま廃棄処分される衣服ロスとなっている現状も課題とされている。

衣服ロスとは大量に生産され売れ残った衣服のほか、納期遅れや注文キャンセルにより市場に流通せずに廃棄される衣服のことである。このような背景がありアパレル業界としては、サステナブルな取り組みを推し進めなければという意識が強くなっている。

一例を挙げると世界最大手のスポーツウェアメーカーであるadidas(アディダス)は、「2024年までに、adidasではすべての製品にリサイクルポリエステルを100%使用へ」を掲げている。実際、アディダスの人気シューズである「スタンスミス」商品に2021年よりリサイクル素材を使用することを発表し実現している。

また古くなった製品にリサイクル素材を用いてリメイクし、プラスチック廃棄物削減への取り組みを始めた企業も出てきている。

食べ物(フード)としてのサステナブル

食品業界におけるサステナブルを考えたときに真っ先に思い浮かぶのが「フードロス」ではないだろうか。世界ではまだ食べられる食品が年間13億トンも廃棄処分されている。

13億トンという数字は、世界で生産されている食品の3分の1にあたる。世界では9人に1人が栄養不足といわれているなか、なぜこんなにも大量な食品が廃棄されるのだろうか。日本の事例でいうと、その答えは2つある。

1つはスーパーやコンビニなどの小売店での売れ残りや規格外製品の廃棄である。もう1つは家庭での料理の作り過ぎや買ったのに食材を使わずに捨ててしまうことが挙げられる。

例えば、海外では外食時に注文しすぎて余ってしまった料理をギーバッグと呼ばれる容器で持ち帰ることができる。この習慣のように日本でも、今後はますます一人ひとりの意識改革や取り組みが求められていくだろう。

また、食べ物としてのサステナブルを考えたとき、ここ数年で急拡大しているのがサステナブルフード市場である。サステナブルフードとは「代替肉」や「植物食」に代表される環境負荷を減らしながら生産される食品のことである。

日本の食品メーカーでもサステナブルフードの開発が次々に行なわれている。喫茶店チェーンのコメダ珈琲店は植物食をうたうカフェをオープンし、伊藤ハムや丸大ハムなど肉のプロ集団も代替肉市場に手を伸ばしている。

2020年の世界の代替肉(植物由来肉・培養肉)の市場は2,572億6,300万円といわれるが、2030年には4倍の1兆8,723億円に拡大する見通しも出ている。補足としてだが、代替肉の増加で畜肉が減少することで、牛のゲップによるメタンガス排出削減にも寄与できるとされている。

投資としてのサステナブル

サステナブルは投資先を検討するときの判断材料としても使われる側面がある。先ほど紹介したサステナブルフードも投資家の関心を集めている。事実、投資家ネットワーク「ファーム・アニマル・インベストメント・リスク・アンド・リターン(FAIRR)」のように、畜産や養殖関連の企業については、持続可能性を評価・格付けしている事例もある。

日本ハムや日本水産など日本の大手企業が厳しい評価を受けている一方で、代替肉の導入を積極的に取り組んでいる食肉大手の米タイソン・フーズなどは高評価を受けている。

このようなサステナブル投資はESG投資とも呼ばれる。ESGは企業の持続的成長につながることをお伝えしたが、投資家目線で見ても、企業の業績や株価のパフォーマンスを見るうえで無視できない要素となっている。

近年ではコロナ禍のような株価が下落する局面で、サステナブル戦略を掲げている企業とそうでない企業の下落率に差が生じ、投資家にとってサステナブルへの取り組みが企業に求められていることが示された。もはやサステナブルは主要なファクターとして認識されているのである。

投資家がサステナブルに取り組んでいる企業を好む理由はユニーク性があるからでもある。通常、投資の目的はいかに元本に対して大きなリターンが得られるかであるが、サステナブル投資は違う。

サステナブル投資は「環境に対してプラスの影響が期待できる」、「社会に対してプラスの影響が期待できる」を理由に挙げている投資家が多い。企業としてはリターン以外の要素で投資家満足度を上げる時代に突入したともいえるだろう。

新築・リフォーム住宅におけるサステナブル

サステナブルは不動産業界にも浸透してきている。今まで不動産は老朽化すれば取り壊して新たに建築する「スクラップ・アンド・ビルド」が主流であった。しかしサステナブルが主流になりつつある今、取り壊して新たに建築するのではなくリフォームして持続的に住める住宅作が注目されている。

100年耐えることのできる持続可能な住宅に行政も支援の輪を広げている。国土交通省では「サステナブル建築物等先導事業」を展開し、省エネや省CO2に関わる先導的な技術の普及に寄与する住宅に補助金を出している。

また、再生可能な循環資源である木材を大量に使用した木造建築物を広く国民に示し、啓蒙する事業にも補助金を出している。

それではサステナブルな不動産とは具体的にどのような不動産だろうか。それは設計・施行・運用の各段階においてサステナブルを考える不動産のことである。例えば、不動産に使用される建築資材にCO2排出や環境負荷の少ないリサイクル材を利用し、屋上に太陽光パネルを設置して再生可能エネルギーを利用することなどである。

日本の不動産の寿命は約30年といわれている。日本の住宅は1世代で終わってしまうのが現状だ。しかし、環境意識の高まっている昨今では、サステナブルを意識した建築トレンドはさらに拡大が見込まれる。子の代、孫の代まで末永く住み続けることができる住宅作りが当たり前になる時代も近いだろう。

日本政府が目指すサステナブルの形

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2020年12月に開催されたSDGs推進本部の会合で「SDGsアクションプラン2021」が公表された。SDGsアクションプラン2021では4つの重点事項が掲げられている。

  1. 感染症対策と次なる危機への備え
  2. より良い復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
  3. SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
  4. 一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速

また、2020年に発生した新型コロナウィルスにより日常が激変し、新たな生活様式が見直されている。この脅威を乗り越えていくことが現在の最重要課題となり日本政府も感染症対策に大きな決意を持って対峙する姿勢を感じる。

日本政府は「2050年までに温室効果ガス排出ゼロ」を宣言しており、カーボンニュートラルに向けた取り組みも加速している。SDGsアクションプラン2021では「省エネ」よりも「再エネ・新エネ」が強調されており、新たなステージに向かうことが伺える。

我々(消費者)が行なえるサステナブル行為

そんななか、我々国民一人ひとりに何ができるのかを考えていきたい。サステナブルな行動は日常生活のなかでも十分行なえる。例えば、節電。使用していない電子機器は電源タップから外して完全にオフにする。その他にも、野菜は皮を捨てずに最後まで食べる、クレジットカードの請求書は紙ではなくオンライン確認にしてペーパーレス化に貢献する、などである。

節電や節水、マイバッグやマイボトルの持参、食品ロスの削減など知ってはいるもののまだできていない方はこの機会に始めてみてはどうだろうか。

まとめ

サステナブルで大事なことは「他人任せではなく自ら行動すること」である。なぜなら1人の行動は微々たるものでもそれが集まれば大きな力となるからである。サステナブルな社会は一朝一夕に達成できるものではない。

忍耐強く継続して行なう必要があり、そのためには個人の考え方、行動を変える必要がある。まずはサステナブルとは、SDGsとは何かを知ることで、日常生活にも深く密接していることがわかるだろう。簡単なことからで良い。まずは行動することが大切だ。

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