粗利益・粗利益率とは?営業利益との違いは?高ければ高いほど良いわけでもない粗利益・粗利益率について徹底解説!

読み方:あらりりつ
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粗利益(Gross profit)とは、売上高から売上原価を差し引いた残りの利益で、売上総利益ともよばれる。 ipopba/i-stock

粗利益とは

 粗利益(Gross profit)とは、売上高から売上原価を差し引いた残りの利益で、売上総利益ともよばれる。

同時によく使われる粗利益率とは

 粗利益とともによく使われる指標に粗利益率がある。これは、粗利益を売上高で割った比率で、たとえば売上高が1000万円で売上原価が600万円なら、粗利益は1000万円-600万円=400万円、粗利益率は400万円÷1000万円=40%だ。

粗利益と営業利益の違い

 企業における1年間の業績をレポートする「通信簿」が損益計算書だ。損益計算書では、上から売上高・売上原価・売上総利益・販管費・営業利益の順で段階別に表示される。

 損益計算書で明らかなように粗利益が企業のもとに残る利益ではなく、ここから人件費や店舗の経費(販管費)が差し引かれ、手元に残った利益(営業利益)が弾き出される。

粗利益を増やすには

 粗利益=売上高×粗利益率だから、増やすための手段としてはまず売上増だ。つまり、薄利多売などで粗利益を膨らませるわけだ。しかしこの方法は手っ取り早いが、競合との体力勝負もきつく長続きしない場合が多い。

 もう一つは、粗利益率の向上だ。競合との差別化などにより、値引きしなくても売れる商品・サービスの提供、仕入原価の抑制といった努力を重ねれば粗利益率は向上し、売上が変わらなくても粗利益は増加する。

粗利益率が高いメリット

メリットのイメージ
Advantages and disadvantages

 粗利益率が高ければ、売上増が直接営業利益アップに効いてくる。次のA・B社は売上・営業利益は同じだが、粗利益率が違う。

(A社)
売上高1億円
粗利益7000万円(粗利益率70%)
販管費6000万円
営業利益1000万円

(B社)
売上高1億円
粗利益2000万円(粗利益率20%)
販管費1000万円
営業利益1000万円

A・B社とも売上が1億2000万円(2割増)に増えると

(A社)
粗利益1億2000万円×70%=8400万円
営業利益8400万円-販管費6000万円=2400万円(+140%)

(B社)
粗利益1億2000万円×20%=2400万円
営業利益2400万円-販管費1000万円=1400万円(+40%)

 つまり同じ売上2割増で、B社は営業利益4割アップにとどまるのに対し、A社はなんと2倍以上に上昇するのだ。

粗利益率が高いデメリット

 ところが売上が落ち込んだ場合は、形勢が逆転する。粗利益率が高い企業は売上減少に弱いのだ。今度は同じA社・B社で売上が2割落ち込んだケースを試算する。

(A社)
粗利益8000万円×70%=5600万円
営業利益5600万円-販管費6000万円=▲400万円

(B社)
粗利益8000万円×20%=1600万円
営業利益1600万円-販管費1000万円=600万円(▲40%)

 つまり売上が2割落ち込んだだけでA社は赤字に転落するのに対し、B社は営業利益4割減で踏みとどまることができる。この例は極端な例に思えるかもしれないが、業種、業態が違えばこうしたことは往々にして起こりえる。

粗利益率が高い企業・低い企業の実例

 実例として、高粗利益率企業を代表して資生堂(東京都/魚谷雅彦社長)、低粗利益率企業を代表して東ソー(東京都/山本寿宣社長)を取り上げる。

粗利益率が高い企業の実例:資生堂

化粧品メーカーのイメージ
化粧品メーカーは総じて粗利益率が高い。 funfunphoto/i-stock

 資生堂に限らず、化粧品メーカーは総じて粗利益率が高い。高・中価格帯化粧品は、パッケージ・成分の研究開発、メディア広告を含めたマーケティング、カウンセリング販売員など、商品そのもの以外にコストがかかるビジネスモデルで、結果的に業界平均の粗利益率も75%前後と、食品・日用品などと比較してもかなり高い。

 資生堂の売上高粗利益率(2019/12期)は77.5%で、高粗利益率の収益構造は売上増がダイレクトに業績に効いてくる。ここ数年資生堂は、インバウンドによる国内販売押し上げと中国など海外売上増の影響で業績を大きく伸ばし、2016年から2019年のわずか3年間で営業利益は3倍以上に増えた。

 ところが今般のコロナ禍で、歯車は逆回転する。2020年12月期の売上高は18.6%の減にとどまったものの、営業利益は86.9%も落ち込んだ。まさに高粗利益率企業の典型パターンだ。

粗利益率が低い企業の実例:東洋曹達

 粗利益率が低い実例として取り上げるのが、総合化学メーカーの東洋曹達(以下、東ソー)だ。総合化学メーカーは装置産業で設備コストが重くのしかかる上に、取り扱うプロダクトの多くがコモディティ商品で競争も激しく価格は引き上げられない。結果として、粗利益率は低く抑えられる。

 実際に、東ソーの2020年3月期第3四半期(20年4月1日~12月31日)の粗利益率は26.2%と資生堂の1/3だ。しかし、今期業績は低粗利益率に助けられた。21年3月期第3四半期決算によると、売上高が12.7%落ち込んだのに対し、営業利益は23.1%減にとどまったようだ。

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