買上点数は果たしてKPIとなりうるのか? 既存店売上を構成する「部分」と「全体」
食品の値上がりが続く中、スーパーマーケット各社の買上点数が伸び悩んでいます。そんな状況下、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)は、買上点数アップを下期の優先課題と位置付けます。ところが、ライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)の岩崎高治社長は、「買上点数をアップさせるだけならいくらでも方法がある」とし、そこだけをとらえないと言います。
念のため断りを入れておきますが、岩崎社長はU.S.M.Hを批判しているわけではありません。まったく別の文脈で出た話です。買上点数に対する両社の対照的なスタンスをあえて並べたのは、既存店の売上を分解して得られる「客数」「客単価」、そして「一品単価」「買上点数」について、その意味をあらためて考えるためです。

U.S.M.Hは買上点数だけを追うわけではない
U.S.M.Hの考え方は明快です。買上点数が伸びるとは、すなわち店でより多くの商品を購入してもらえるということであり、それは顧客満足の向上を表すというロジックです。顧客満足が高まれば来店頻度も高まり、客数も増えるでしょう。買上点数アップ → 客単価アップ → 客数アップ → 既存店の売上アップとつながっていく良好な連鎖をめざすというわけです。
一方、ライフ岩崎社長が「買上点数だけを重視しない」と話したのは、たとえば青果のバラ販売を増やすなどの手法で、見かけ上の買上点数を伸ばしても意味がない、という文脈からです。買上点数は既存店売上高を構成する要素の一つであり、そのほかとのバランスが大事という考え方です。
買上点数を増やして既存店を伸ばしたいとするU.S.M.Hと、既存店の成長を図るのに買上点数だけを注視しないとするライフ。買上点数への意気込みは真逆のようですが、どちらもゴールは同じです。既存店の売上を健全に伸ばしたいのです。
U.S.M.Hにしても、起点を買上点数に置いたというだけで、客単価と客数の上昇、その結果としての既存店の売上増という連関をつくり出そうとしているのですから、全体バランスの中で買上点数を考えていることに違いはありません。U.S.M.Hでは、買上点数アップのため打ち手として、プライベートブランド(PB)の拡充、事業会社4社(マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東、いなげや)による共同調達・販促の強化を打ち出しています。これらは一品単価のコントロールを意図したものです。既存店売上高を構成する要素は、すべてつながっているのです。





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