青果流通のキーパーソンが激白! 持続的な供給に向け小売側に求められることとは
農業従事者の高齢化、物流業界の働き方改革、消費者ニーズの多様化──。日本の青果流通は今、大きな転換期にある。そうした中、全国農業協同組合連合会(以下、JA全農)は、産地と小売、さらには生活者を結ぶ「中間支援機能」の強化を図っている。
青果流通全体での“結束”が徐々に進む中、生産現場ではどのような変化が起きているのか。JA全農でチーフオフィサーを務める戸井和久氏に話を聞いた。
生産現場で顕在化する人材不足と高齢化
──青果の生産現場では現在、どのような課題を抱えているのでしょうか。
戸井 最も顕著なのは、人材不足と高齢化です。農家の平均年齢は年々上がっており、新規就農者も思うように増えていません。そこに、資材コストの高騰が追い打ちをかけていて、ハウスの建材、肥料、農薬などの価格がおよそ1.5~2倍に上昇しています。
人手不足の中で、現場はすでに外国人労働者に頼らざるを得ない状況ですが、その確保も年々難しくなっており、制度や待遇面の見直しが求められています。同時に、人に依存しすぎない仕組み、たとえば自動化や遠隔操作、作業の分業化なども喫緊の課題ですが、模索の段階を抜け出せていません。

──気候変動の影響も年々大きくなっています。
戸井 非常に重い問題です。春と秋の期間が短くなり、もはや日本に「四季」はなくなりつつあり、「長い夏」と「長い冬」という2つの季節が主体となっている印象です。
当然、農産物への影響は大きく、たとえば青森のリンゴでは、雪害による倒木被害を受けているほか、今年は山形のサクランボも高温で不作です。ミカンも気象条件で品質が大きく左右されています。こうした不安定な気候に対し、農家は常に対応を迫られている状況です。

──いわゆる「2024年問題」をはじめとする、物流業界の変化は青果流通にどのような影響を及ぼしていますか。
戸井 物流の面では、長距離輸送が難しくなっています。現在はJA・民間を超えた共同輸送体制を組むなどの対応を進めているところです。たとえば、大分から大阪へは直送が難しいため、愛媛までフェリーで運び、そこから陸送するようなルートを組んでいます。物流の課題は、単なるコストの問題ではなく、時間・人員・制度すべてに関わるものです。
また、そのほかの対策として、逆走物流や相互配送に取り組んでいます。たとえば、商品を運んだトラックが、帰りに別の商品を積んで戻れるようメーカーや物流と協力を進めています。農産物流通と他業種の物流をつなげることで空車を減らすなど、物流全体での最適化が必要だと考えています。
──こうした青果を取り巻く課題を解決するための、農業技術の導入は進んでいますか。
戸井 産地によっては、密植栽培や高収量品種の導入が進んでおり、商品の単価・収穫量・作業効率を総合的に評価する動きが広がっています。また、パック詰めの手間を減らせる形状や、収穫時期・保存方法を左右する熟度を意識した品種も増えてきており、品種選びが経営判断そのものになってきたように感じています。
とはいえ、それでも前述の人材不足と高齢化が大きな壁となっているのが現状です。まずはこの課題を解決しなければいけません。
産地と販路をつなぐ「営業開発部」の役割
──販売事業の面ではどのような取り組みを進めていますか。
戸井 JA全農では、販売事業の改革を目的として、17年9月に営業開発部が立ち上がりました。JA全農の営業拠点として新設され、産地と量販、小売、外食などの間に立ち、国産農畜産物の販売力強化の取り組みを進めている部署です。
営業開発部では、販売企画、商品開発、マーケティング、物流、さらには各地の直売所など、多岐にわたる領域をカバーしています。商品が消費者に届くまでの過程で、その価値をどれだけ高めることができるか。いわゆるバリューチェーンの向上をめざし、生産・流通・販売の過程で一緒になって価値を生み出す「チームMD(マーチャンダイジング)」を軸に進めています。
営業開発部が各現場の情報やニーズを集約し、社内外の関係者とつなげることで、実効性のある提案につなげています。また、これまで縦割りだったJA全農の枠を超え、横断的な連携を後押しする機能も担っています。
──産地・小売との商談で意識していることは。
戸井 大事なのは相手の立場を丁寧にくみ取ることです。小売が求めるのは安定供給であり、品質のばらつきを減らす工夫が必要となります。一方で、生産現場には気候や人手といったコントロールできない要素もあります。そのギャップを埋めるために、技術的な話だけでなく、生産地の生育環境や気候の状況などにまで踏み込んで対話を続けています。
──チームMDではどのような事例が生まれていますか。
戸井 たとえば、ブロッコリーを産地で一次加工し、
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