日本マクドナルド 原田泳幸CEO(最高経営責任者) 次期成長戦略を発表!(2)

2012/11/05 00:00
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 次に今後の成長戦略の話をしたい。QSC(信頼の品質、スピーディーで心地よいサービス、清潔で快適な環境)&Value(価値)が当社の戦略の基盤になる。

 これがしっかりしていなければ、投資効果は上がらない。だから、さらに強化する。9年前、社長に就任した時から言い続けていることだ。

 現状の、QSC&Valueを店舗タイプ別、地域別、曜日別、時間帯別に見て行くと、当社にはまだまだ課題があるとわかっている。だからこそ、その改善に活路があると考えている。

 

 たとえば、週末のドライブスルーはまだまだ込み合っている。ということは、サービスの速度(Speed of service)を上げることに商機があるということになる。

 

 その上で事業構造改革を繰り返していきたい。

 

 具体的には、①店舗ポートフォリオの最適化、②フランチャイズビジネスの強化、③マーケティング強化の3つになる。

 

 さきほども話したが、①店舗ポートフォリオの最適化ということでは、ゴールドスタンダードドライブスルー(大型ドライブスルー:以下、GSDT)に投資を集中する。毎年120店舗を開業する計画だ。

 これは従来の戦略と変わっていない。現在、GSDT店舗は約3300店舗中382店舗を数える。売上の伸び率、店舗粗利益率ともに非常に高いフォーマットである。

 

 一方、全店のうちの1200店舗は、古く、月商が1000万円以下、フルメニューを提供できないものだ。その結果、売上伸び率、店舗粗利益率もとても低い。

 

 そして、それ以外の店舗が1700店舗あり、合計すると約3300店舗という構造になっている。この1700店舗は利益を上げているので、「マックカフェ」や「マックデリバリー」を併設しリモデルしていきたい。

 

 私は、上記で2番目に挙げた1200店舗を閉鎖して、GSDTに建て替えていくことに成長のチャンスがあるとみている。

 だから、PL(損益計算書)とのバランスを取りながら、戦略的閉店をできる限り加速していく。2013年12月期は、14億円を費やし、110店舗を閉店する計画だ。

 

 次に有力立地の土地・建物の所有、あるいは建物(土地は賃借)の所有は、いずれにも店舗利益率向上のチャンスになる。だから優良不動産を取得しいきたい。

 

 日本マクドナルドの特徴は、歴史的な背景から自社物件が非常に少ないことである。だから、ここに着手する。

 郊外や地方では市場価格が下落するリスクの少ない優良不動産を探し取得し、利益向上を図りたい。

 これは海外のマクドナルドの本来のビジネスモデルである。

 

 直営店舗で計算してみると、土地・建物を所有した場合には店舗利益率は約6ptアップする。建物だけを所有する場合でも約1pt上がる。

 

 2つ目は、②フランチャイズビジネスの強化である。

 

 これは過去、数年間を通じて実践してきたことであり、着実に進んでいる。

 実際、2007年に29%に過ぎなかったフランチャイズ比率は、2011年に62%を達成。2013年は70%に到達する予定である。これをどこまで上げていくかは、現在、議論中である。 

 

 いずれの際も成功のカギを握っているのは人材。すなわち、フランチャイジーのオーナーである。

 

 その意味で、オーナーをいかに育成しいていくかは今後の継続成長に不可欠のポイントになる。具体的には、①社内からオーナーを輩出する、②社外から外部参入を求める、の2本立てで本格的活動をスタートさせる。

 

 すでに社外ということでは、オーナーの子息やフランチャイジー企業の社員がオーナーになったり、後継者育成などかなり進んでいる。

 

 社内からの輩出にも拍車を掛けたいところだ。

 昔は、当社の社員がオーナーになることがほとんどだった。しかし、今や、オーナーになるための審査基準は①経営能力、②財務能力、③店舗のオペレーション能力の3つが条件で、大変厳しいものになっており、なかなかハードルが高いことも事実だ。

 

 さて、3番めの③マーケティング強化については、売上増強を実現するため、(1)CONVENIENCE(コンビニエンス:便利) 、(2)BREAKFAST(ブレックファスト:朝食)、(3)MENU(メニュー)、(4)value(バリュー:価値)、と4つの柱を立てている。

 

 まず、(1)コンビニエンスということでは従来のドライブスルーのサービス速度をもっと改善したい。

 それと重要施策になるのが「マックカフェ」と「マックデリバリー」だ。

 

 「マックカフェ」は2012年9月末日現在4店舗(ストアフロント3店舗、郊外ドライブスルー1店舗)を展開している。

 店舗内における「マックカフェ」の売上シェアは、魚津店(新潟県、ドライブスルー型店舗)のように2割に達する店舗もある。

 2012年は、郊外のドライブスルーの新店を中心に「マックカフェ」を30店舗前後を出店するとともに、2013年には全国100店舗以上に拡大する。中長期的には全国500~600店舗を目指したい。

 

 「マックデリバリー」は、2012年10月末現在17店舗を展開するに至っている。

 マクドナルドの店舗から届け先に配送する「マックデリバリー」のビジネスモデルは、ワールドワイドのマクドナルドにしてみれば、新奇なことではない。すでにシンガポールや韓国、香港、中国などでは素晴らしい業績を残している。

 外食産業は、天候やオリンピックのような大きなイベントの影響を受けやすい。お客さまが外出を控えるようになるからだ。

 逆に、その時に、デリバリーサービスは、大きな武器になる。ひとつの店舗のキャパシティの中で補完的な売上をつくるということは戦略的に意味のあることだ。

 

 「マックデリバリー」の機能を付加することで店舗全体の売上は8%以上上がっている。

 今後の既存店売上高向上のけん引力になるはずだ。

 2012年末には20店舗、2013年末には250店舗でのサービスを開始する。既存店をベースに潜在性を試算すると1500店舗、売上高500億円以上ある。今後、どのくらいのスピードで出店していくのかについてはいましばらく時間を要する。

 実際にデリバリーを開始した店舗を見ると、ほとんどマーケティング活動をしていないにもかかわらず、デリバリーするバイクの能力以上に需要があることが分かっている。

 

 (2)ブレックファストのキャンペーンについては、それぞれ実施する直前に案内したい。ひとつ言えるのは、「朝食には大きなチャンスがある」ということだ。

 にもかかわらず、当社は継続して一貫しては、その市場を開拓していなかったという反省がある。

 来年は、継続し徹底したマーケティング施策を進めていく。2012年10月からコーヒーサンプリングを行っており、12日間で累計300万杯を提供し、新規顧客獲得に成功している。これはブレックファストに大きく寄与するという検証もできている。

 

 (3)メニューということでは、従来、新規メニュー開発に相当力を入れてきた。

 

 しかし、数を出し過ぎたという感は否めない。3週間のローテーションで4品を新発売する。その3週間でどのくらい売れるのか? どのくらい利益が出るのか? どのくらいマーケティングの投資が必要か?

 

 片や「ビッグマック」は、粗利益は非常に高く、広告宣伝もせずに、確実に売れている商品だ。

 しかし、とくに若いお客さまを中心に、新規メニューを試した経験はあっても、「ビッグマック」を食べたことのない人が驚くほど多い。これまで「ビッグマック」がどれほど価値のある商品なのかをほとんど伝えてこなかったことに原因がある。

 

 また、商品以外の無形の価値、スピードとサービス、コンビニエンス、安心感、ブランドなど情緒的、精神的価値も過去には伝えていなかった。
「メガマック」や「クオーターパウンダー」などを発売した時には、情緒的価値を伝えて成功しているにもかかわらずである。

 

 その検証もできている。その意味でもう一度原点に戻って、当社のワールドワイドでの「ビッグマック」「マックフライポテト」「チキンマックナゲット」などの定番メニュー、レギュラーメニューに対してもっとマーケティング強化を図る。

 

 そして、(4)バリューについてだ。

 今年もバリュー戦略によって、客数を増やすことには成功した。ただ100円メニュー、120円のメニューだけがバリュー戦略ではないと自戒したい。

 セットメニューのお得感・納得感の訴求ももっと強化すべきだと考えている。

 

 ということで、さまざまなメニューポートフォリオ、構成を考え、強化していきたい。
 

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