1人当たり購入金額が対前年比で増加傾向にある精肉市場、新たな価値提案が重要に
多くの食品が値上げトレンドにあるなかで、精肉も生産原価の高騰や為替動向の影響を受けて店頭価格は高止まり傾向にある。そのため、節約意識が強いなかでも、買上金額自体は増加傾向にある。今回は、リサーチ・アンド・イノベーションが提供している「買いログ 生鮮・惣菜データ」の精肉の1人当たり購入金額の変動から、最新の市場動向を追ってみた。
「牛肉」「豚肉」「鶏肉」いずれも購入金額は増加
「買いログ 生鮮・惣菜データ」は、「レシートがお金に変わるアプリCODE(コード)」を運営するリサーチ・アンド・イノベーションが提供するデータサービス。同アプリで収集している購買データ(買いログ)から、レシート情報と同社の親会社であるインテージのノウハウを活用し、高い精度で活用可能な「生鮮・惣菜」の購買データを提供している。
このデータを元に、2021年6月から23年5月までの「牛肉」「豚肉」「鶏肉」の1人当たり購入金額の前年比増減率を数値化した【図表】。
これによると、「牛肉」はおおむね2022年9月から、「豚肉」と「鶏肉」は22年3月から、購入金額が前年を上回る傾向が続いている。
これは消費量の増加というよりも、精肉小売価格の高止まりが原因と考えられる。季節変動はあるものの、最近は精肉における消費金額が常に前年を上回っている。
2021年は、輸入肉の調達難などで価格が高まった影響や、コロナ禍後の反動減などで、消費が落ち込んだ時期。こうした時期から、消費量は回復してきていると考えられるが、価格上昇が今後の足かせとなりそうだ。
ブランドや目新しさなど、品揃えの多様化で価値訴求強化
こうした状況を受けて、小売店店頭でも、簡便性や価格以外の価値を訴求するさまざまな取り組みが行われている。
価格高騰を受けて、ブランドなどの付加価値訴求や高級感のある肉メニューの提案が活発化しているほか、馬肉、ジビエ、大豆ミートなど、食卓に目新しさを加える品揃えの拡大も行われている。
また、コロナ禍以降、需要が高まった冷凍商材の品揃え強化や、独自性の高いミールキット型商品の提案なども行われている。
以前のように売価で魅力付けすることが難しくなっている現在、独自のMD戦略で新しい価値を提案していくことがこれまで以上に求められている。