第74回ショッピングセンターは買い物以外の価値をどうつくるか?
モノからコトへと言われて久しい。しかし、このコトの先には必ずモノがある。もちろん、時間消費、体験消費など物質的なものが介在しない消費活動は多々存在する。しかし、多くの局面で「モノ」は必ず介在する。このメカニズムを理解しないまま「コト消費」という言葉に踊らされ、ワークショップのイベントを開催するショッピングセンター(SC)やそのテナントが後を絶たない。イベント自体は悪いことではない。でも、そこからどうやって儲けるのか。今回は、「モノからコトへ」をモノ消費につなげることを考えたい。
「モノからコトへ」の誤解
モノが売れない時代と言われる。でも、そうだろうか。新聞紙上には過去最高売上や最高益の見出しが躍る。ではSCからは「なぜ売れない」という嘆きが多く聞かれるのか。答えは簡単だ。顧客ニーズに合わないモノが売られているからで、店頭に並んでいるモノがECで手に入るものばかりだからだ。だからわざわざ出掛けていく意味を見出せない。
ところがSC事業者はこの「売れない」現象を曲解して、「今の時代は“モノからコトへ”だ!」とばかりに単純にイベントやサービスを繰り出すことに終始している。でも、ワークショップのイベントも子供のプレイルームもカルチャーセンターもゲームセンターもシネコンも料理教室もSCには昔からあったはずだ。実際にコト消費が伸びているデータは無い(図表1)。実は、単に洋服が売れなくなっているだけのことなのである。
「モノからコトへ」の本当の意味
このモノからコトへと似たようなキャッチコピーに「モノを売らずにコトを売れ」がある。実はこのキャッチコピーの本質はコト消費を促すことによってモノ消費を見直すことを迫っている。モノはコトがあって初めて売れるもの。スポーツにはスポーツ用品が必要となり、スポーツをすればドリンクも欲しくなり、出掛けるにはバッグも必要になり、旅行とセットになれば多くの旅行用品が必要になる。要するにコトを促すことで必要な「モノ」は必ず発生する。それを無視して、ひたすら店頭に洋服を並べるだけでは売れるはずもない
続きを読むには…
この記事は DCSオンライン会員(無料)、DCSオンライン+会員限定です。
会員登録後読むことができます。
DCSオンライン会員、DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営 の新着記事
-
2024/12/03
第103回 マーケティング2.0へ!SCは「神社の参道商売」と同じである理由 -
2024/11/18
第102回 SCのマーケティングは「マスマーケティング」である理由 -
2024/10/31
第101回 今年の新入社員の30年後は「全員管理職」?人口減時代のビジネスとは -
2024/10/17
第100回 30年後、社会と商業はどうなっているのか? -
2024/09/27
第99回 「顧客を把握できる」ECに対し、リアル小売が取るべき3つの戦略とは -
2024/09/13
第98回 百貨店とSC、「インバウンド一色」への懸念とは
この連載の一覧はこちら [103記事]
関連記事ランキング
- 2024-12-12「オーケー」後の関西 イオンリテールがねらう都市型SCそよらで脱同質化
- 2024-03-08ストア・オブ・ザ・イヤー2024を発表!今、行くべき店はこの店だ!全42店舗掲載
- 2024-11-18第102回 SCのマーケティングは「マスマーケティング」である理由
- 2024-04-05第88回 減少、閉鎖続く!2023年度のSC動向まとめと24年以降の展望
- 2024-12-03第103回 マーケティング2.0へ!SCは「神社の参道商売」と同じである理由
- 2022-11-21第58回 自らが決めた「定義」に縛られた百貨店とSCが生き残る方法
- 2024-08-15第96回 ショッピングセンターの売上がいま“なぜか”好調な理由とは
- 2024-06-16コロナ後も堅調! ミールキットのパイオニア、ヨシケイの現在地
- 2019-12-26SC総数が16年ぶりに前年割れ、閉鎖が新設を上回る
- 2020-04-03イオンモール、新型コロナでテナント賃料を減免と発表 3~4月の2か月分