SPAは“魔法の杖”ではない
「粗利率を改善でき、商品の差別化が図れる」経営手法としてSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)に取り組む企業は多い。SPAは、その名の通り、製造から小売りまで一貫して行うアパレル業のこと。最近は「製造小売業」と訳され、他業界に適用されることが多くなっている。
アパレル業界では、ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)、ワールド(兵庫県/寺井秀蔵社長)、ハニーズ(福島県/江尻義久社長)など数え上げれば、枚挙にいとまがないほど多い。
住居関連のSPA企業の代表格はニトリ(北海道/似鳥昭雄社長)だろう。家具・インテリア・ホームファニシング分野のSPAであり、「ワンハウス・トータルコーディネート・マーチャンダイジング」で一軒の家の全ての空間に対して調和を持たせた商品提案している。
最近は、食品スーパーも製造小売業へのチャレンジを始めており、神戸物産(兵庫県/沼田昭二社長)は、遠くエジプトや国内では北海道に農地を確保し、原材料から商品開発に当たっている。
ただ、残念ながらSPAは“魔法の杖”ではない。安易な参入や取り組みは危険きわまりない。売れる商品の開発に成功すれば、「製・配・販」業の売上と利益を手にできることができるが、逆に失敗してしまえば、トリプルパンチをなって自分を傷つけることになるからだ。
実際、中国から大量に開発輸入した商品が、売れずに行き場を失い、日本の倉庫にうずたかく積まれているなどという話は日常茶飯事だ。
SPAで成功するには、クリアすべき難題も少なくなく、それらを正面から受け止める覚悟がないのであれば、ハナからあきらめた方がいい。
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