産直とフード＆ドラッグ！異例のタッグが切り開く地域密着の新境地とは

2023/04/01 05:50

経営戦略

ドラッグストア（DgS）ウエルシア 23年4月1日号　「勝つDX」の本質 JA（農業協同組合）

取材・文：雪元史章（ダイヤモンド・チェーンストア副編集長）

ウエルシアホールディングス（東京都／松本忠久社長：以下、ウエルシアHD）傘下で群馬県地盤のドラッグストア（DgS）であるクスリのマルエ（江黒太郎社長）が今年2月、群馬県前橋市に「マルエドラッグ前橋川原店」（以下、前橋川原店）をオープンした。Aコープ東日本（神奈川県／宗村達夫社長）をコンセッショナリー（コンセ）に迎え、地場産品・地域MD（商品政策）を武器に集客を図るという新たな方向性を掲げたフード&ドラッグ店舗だ。その全貌をレポートする。

競争激化を背景にフード&ドラッグを志向

　前橋川原店は前橋市中心部から北西へ約5㎞、関越自動車道「駒寄スマートIC」からクルマで5分ほどの場所に位置する。

　同地では地場の食品スーパー（SM）しみずの「しみずスーパー川原店」が営業していたが、同社が2022年に会社清算手続きに入り閉店。もともと同じ敷地内でDgS（旧マルエドラッグ川原店）を営業していたクスリのマルエが、同店の撤退跡に移転・居抜き出店したかたちだ。ちなみに川原店を含め、しみずが展開していた3店舗はウエルシアHDが譲受しており、同社の一部社員はクスリのマルエおよびウエルシア薬局（東京都／田中純一社長）に転籍している。

　前橋川原店の特徴は、Aコープ東日本の産直SM「JAファーマーズ前橋川原」との融合型店舗である点。メーン入口付近では平台に地場野菜や果物、加工食品などがボリューム感たっぷりに陳列され、さながら直売所のような雰囲気が漂っている。本誌でも幾度となく全国のフード&ドラッグ店舗を取り上げてきたが、産直・地場産品とDgSを掛け合わせて売場を構築するというケースは珍しい。

マルエドラッグ前橋川原店の入口入ってすぐの産直コーナー — メーン入口すぐの産直コーナーでは平台に地場産の野菜や果物、弁当や総菜、加工品などが並ぶ。冷凍ケースでも地元メーカーの冷凍餃子や冷凍肉などを豊富に展開

　クスリのマルエにとって、本格的なフード&ドラッグ業態を出店するの今回が初めて。その背景にはやはり、商勢圏での競争激化がある。「旧店舗（前述の川原店）は一時は社内でも売上上位の店だったが、競争が激しくなるなかで最盛期から2～3割売上を落とすようになっていた」と江黒社長は明かす。集客力を高めるため、クスリのマルエは一部の既存店で生鮮を試験的に導入するなどの取り組みを試行。しかし「どうしても実現できる品揃えには限界が出てくる」（江黒社長）という課題が浮き彫りになったという。

　そんななか前述のような経緯で、ウエルシアHDがモールの運営主となり、クスリのマルエが核店舗として居抜き出店するという話が浮上。ただ、600坪を超える売場サイズはクスリのマルエが単体で運営するには大きすぎること、周辺に競合するSMが比較的少なかったことなどから、フード&ドラッグ業態としての出店を決定。Aコープ東日本をパートナーに迎え、同社がコンセッショナリーとして出店するかたちで、者で売場を融合させるという新たな試みに動いた。