セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由

2023/01/11 05:55
堀尾大悟
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「アプワイザー・リッシェ」をはじめ6つのレディスブランドを展開するアルページュ。オン・オフ問わず着られるコンサバティブなファッションに定評があり、とりわけ「Oggi」などの読者層である20代~30代の女性に根強い人気を維持し続けている。

そのアルページュだが、アパレル業界内では「セールをしない会社」で有名だ。流行の移り変わりが激しいレディスブランドにあって、なぜセールに頼らずに在庫を処分できるのか。その理由を、代表取締役社長の野口麻衣子氏に聞いた。そこには、単なる技術論を超えた「幸福論」があった。

2000年代後半の「エビちゃんブーム」で躍進

アルページュ ストーリー 池袋ルミネ店
アルページュ ストーリー 池袋ルミネ店

 アルページュの創業は1975年。もともとはアパレルの卸売業がメーンだった。

 大学を卒業後、1998年に父の経営するアルページュに入社した現代表取締役社長の野口麻衣子氏。当時はバブル崩壊の爪痕が大きく、名だたる大手金融機関も倒産する日本経済の冬の時代。アパレル業界も例外ではなく、野口氏もアパレル企業の相次ぐ倒産を目の当たりにしていた。

 「卸売業だけやっていては、取引先が潰れると当社も共倒れになってしまう」と危機感を抱き、当時アパレル業界で台頭しつつあったSPA(製造小売業)に活路を見出し、卸売主体からSPA型へとビジネスモデルの転換を決断。その中で2001年に生まれたのが、今もアルページュを代表するブランドの一つ「アプワイザー・リッシェ」だ。

 知名度も、小売のビジネス知識もない状態からのスタート。「池袋の居抜きの物件を借り、とにかく商品を置いて売っていただけ。内装などブランドの世界観にこだわる余裕もなかった」

 そのアプワイザー・リッシェに転機が訪れたのは2003年。商品の品質を評価した銀座松屋から打診があり、念願の銀座に出店を果たす。評判が評判を呼び、名古屋松坂屋、銀座プランタンと順調に出店を重ねていった。

 さらなる追い風をもたらしたのが、「CanCam」などの女性ファッション誌だ。とりわけ2000年代後半には同誌の看板モデルだった蛯原友里さんの「エビちゃんブーム」が社会現象にもなり、アプワイザー・リッシェは「アネキャン世代」の絶大な支持を得ることになる。

 セール時には、商品を運ぶラックからファンが商品をつかみ取りし、売場に着いた頃にはラックが空っぽの状態になることもあったという。「お客さまの熱気に触れ、『ブランドをつくるとはこういうことか』と実感した」と野口氏は当時を回想する。

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