3月10日開催「脱・混沌 新しいスーパーマーケット創造」セミナーレポート
人口減少、オーバーストアの時代にどう生き残るか
流れに埋没しないための独自の経営戦略が不可欠!

2017/03/23 17:29

 人口減少、少子高齢化といった社会構造の変化に、日本の小売市場は直面している。経産省の商業動態統計によれば、2016年の国内小売販売額は139兆8770億円で前年に比べ8000億円近い減少となった。これは2015年が、前年に比べ6000億円近く減少し140兆6660億円となったのに比べても減少幅が拡大している。飲食料品小売業に限れば2016年の販売額は44兆3890億円で1兆円近いマイナスとなる。こうした市場規模の縮小に対して、食品スーパーは完全なオーバーストア状態で生き残り競争が激化していく。その中で生き残るために必要なことは市場に埋没せず、横並びではない独自戦略による事業拡大だ。

 

主催 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア ダイヤモンド・チェーンストア

協賛
アサヒビール株式会社/伊藤忠食品株式会社/加藤産業株式会社/
キリンビールマーケティング株式会社/シャープビジネスソリューション株式会社/
東海漬物株式会社/フジッコ株式会社/マルハニチロ株式会社/三井食品株式会社/
三菱食品株式会社(五十音順)

 

株式会社阪急オアシス 会長 千野和利 氏


阪急オアシスの経営戦略 スーパーマーケット事業の高付加価値創創造

 

2008年までは経営立て直しのための基盤整備に注力

 

株式会社阪急オアシス会長千野和利氏
株式会社阪急オアシス会長
千野和利氏

 企業の戦略は、価値ある独自性の追求の一言につきる。食品スーパーが生き残るために、現在から未来へ続く混沌とした時代をどう生き抜いていくか、非常に重要な局面に来ている。

 

 阪急グループの食品スーパー事業は2001年の段階で22店舗、売上高270億円の規模だった。2006年9月に食品事業会社の統括と事業活動の管理を行う中間持ち株会社として阪食を設立。さらに2008年10月に阪急オアシス、阪急ニッショーストア、阪急ファミリーストア、阪急フレッシュエールを吸収合併し食品スーパー経営および食品製造の4社の事業を統括管理する体制を構築した。食品スーパーの阪急オアシス、卸を担う阪急フレッシュエール、メーカーをまとめ上げた形として阪急デリカ、阪急ベーカリー、阪急フーズという体制ができた。ここまでが食品関連事業の基盤整備の段階となる。

 

 第1期の成長期が始まるのは、2009年に高質食品専門館の第1号となる千里中央店の開設から。ここで考えたことは、「新しい時代のSMのビジネス・フォーマット創り」だ。社内に幹部に加えて若手社員からメンバーをピックアップしたプロジェクトチームを作り、これからの少子高齢化、人口減少に対応したビジネスモデルの開発を進めた。その過程で内外のスーパーを多数訪問し勉強した。ただ勉強しながらも、それを模倣するのではなく独自戦略を展開する方針も固めた。

 

 そして日本の、そして京阪神のスーパーマーケットとしてふさわしいだろうと仮説を立てた出店した最初の店舗が千里中央店というわけだ。そこから16年の箕面船場店まで57店舗を遮二無二開店し続け、新店とともに既存店の改装も行い、仮説を推し進めながら検証、進化を続けてきた。

 

「専門性」「ライブ感」「情報発信」で他店との差別化図る

 

 「高質食品専門館」の売場づくりとしてコンセプトに据えたのが「専門性」「ライブ感」「情報発信」の3つ。そしてそのために60のコンテンツを開発した。専門性を深化として、産地直送や地方名産品といった品揃えのほか、店舗空間の環境や照明などの工夫を行った。さらにライブ感を創出するために、農産対面販売、水産や畜産品の実演販売、デリベーカリーではピザなどのライブ販売など活気ある売場作りを進めた。また、顧客への情報発信として食育への取り組み、シースルースタジオを使った料理教室、デジタルサイネージ、会員情報誌の発行などに取り組んでいる。

 

 「新しい時代のSMのビジネス・フォーマット創り」として並行して進めたのが、「ゆるやかなネットワークづくり」である。10年には香港の高級スーパーであるシティスーパーと提携。さらに14年にじゃイズミヤの統合へとグループネットワークの拡大も図った。16年にはグループで関西スーパー、セブン&アイホールディングスと資本提携。また台湾市場で約900店舗、スーパーマーケットシェアで43%を占める全聯と業務提携も行った。

 

 成長を続けるためには海外戦略が重要になる。これからは東南アジア中心に進出を図る。その第1弾が全聯との提携であり、今秋めどに合弁で製造会社を設立する方針だ。これらの取り組みで第1の成長期として売上高1200億円、85店舗の体制ができた。

 

2020年代以降に向けて“量”から“質”の経営に転換図る

 

株式会社阪急オアシス会長千野和利氏

 問題はこれからの第2の成長期。20年代に向けてどんな施策を展開するかが重要。16年までは、新たな食品スーパーとしてのビジネス・フォーマット作りにチャレンジし、それとともに食品事業グループ内の統合再編を進めた。16年10月には阪急デリカと、経営統合したイズミヤの100%子会社だったデリカ・アイフーズを合併し阪急デリカアイを設立した。合併や提携によるネットワークの拡充とともに、阪急オアシスの強みであるグループでの製造・卸・小売りのSPA展開についても阪急ベーカリー、阪急デリカアイの事業拡大を通じて強化していく。

 

 我々が掲げる企業理念は「地域にとってなくてはならない存在。従業員にとってなくてはならない存在」である。それを中心に事業拡大を図る。店舗開発では郊外型から駅下などの新立地にも進出。顧客政策としてのカード政策では2020年に稼働会員120万人を目指す。

 

 さらにグループSPAの強化、国内外での提携やそのネットワークを生かした商品政策、課題となっている人材雇用についても15年から20年までに累計1000人を採用するつもりだ。人件費が利益を圧迫することになったとしても、今、人材を手当てしておかないと20年代の未来はないというくらいの危機感で臨んでいる。そして20年の段階で100店舗に拡大する店舗政策を実施し、成長を図っていく。

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