3月10日開催「脱・混沌 新しいスーパーマーケット創造」セミナーレポート
人口減少、オーバーストアの時代にどう生き残るか
流れに埋没しないための独自の経営戦略が不可欠!

2017/03/23 17:29

株式会社エブリイホーミイホールディングス 代表取締役社長 岡﨑雅廣 氏


次世代グループ経営と人財戦略

 

過去の成功体験を捨てて挑戦を続ける

 

株式会社エブリイホーミイホールディングス代表取締役社長岡﨑雅廣氏
株式会社エブリイホーミイホールディングス代表取締役社長
岡﨑雅廣氏

 1996年に先代の社長が急逝し、当時ヨシケイ福山の社長だった私がエブリイを引き継いだ。それまでヨシケイ本部の取締役として、FC店の視察の際に地域一番店を教えてもらい見学していたが、自分で食品スーパーを経営するとは考えてもいなかった。エブリイは当時、繁盛店ではあったが6期連続の赤字経営で、周囲には反対する人も多かった。

 

 現在、食品スーパーを運営するエブリイをはじめとしてヨシケイ福山、外食・給食事業、商品企画・通販事業、料亭・居酒屋事業など10社でエブリイホーミイグループを形成している。ここまでの成長を振り返ると挑戦の連続だった。常にビジネスフォーマットの変革を指向し、イノベーションをやり遂げてきた。

 

 16期連続2ケタ増収、9期連続増益を続けているが人口減少や少子高齢化、競争激化などが業績に影響することも十分考えられる。その時にリーダーが過去の成功体験に縛られていると、状況判断を誤る危険性が高まる。実際に従来の慣習を変えていくのは大変で、過去の成功事例を捨てていくことに苦労したが、挑戦を続けることで乗り越えてきたと言えるかもしれない。

 

 3月28日に大型店のエブリイOkanaka津高をオープンした。初めての大型商業施設だが、GMSのような形態ではなくLSC-ライフスタイルセンターとして新しい業態を目指す。

 

問題指摘型から問題解決型の人財を育成

 

 挑戦と変革を進めるのに重要なのは人財。グループ企業各社の経営は次世代の人財に任せているが、いろいろ思い切った改革を進めてくれている。我々の世代は高度成長期で、モノがあふれ、それこそ右肩上がりに成長した時代。それに対して今の若い世代は、モノからコトへの転換に遭遇した世代で、我々とは発想がまるで違う。

 

 エブリイが成長する過程で、人財育成のために2002年に幹部候補向けの社内研修「K塾」をスタート、09年にはアマゾンでベストセラーにもなった類人猿分類セミナー、13年には人間塾、15年には技術センター開設など育成に力を入れてきた。そうした研修を通じて問題指摘型から問題解決型の人財を育成できたと考えている。

 

 “鬼軍曹”と呼ばれていたある店長は、仕事に厳しく、ミスを許さず、厳しく管理するタイプ。仕事に熱心なのはわかるが、スタッフからは煙たがられる。ある時、これから半年、スタッフを叱るのを止めるようにしたらどうかと持ちかけた。「叱らずにどうするんですか?」と言うので、「その代わりにありがとう」と言ってみてくれと。

 

 「店内を清掃してくれてありがとう」「レジを打ち間違えないでありがとう」等々、とにかく「ありがとう」を続けてもらった。そうしたら何が起こったか…まず、レジの打ち間違いをはじめとしてスタッフのミスが減った。それからパートの主婦が売り場作りの提案をしてくれるのなど売上アップと社員のモチベーションアップにつながった。まさに問題解決型に変貌したわけだ。その“鬼軍曹”はエブリイにとって大きな挑戦であるエブリイOkanaka津高で支配人に就任した。

 

類人猿分類を活用しイキイキと働ける職場づくりを推進

 

 もうひとつ解説しておきたいのが類人猿セミナー。人の個性を4タイプに分類し、それぞれをオランウータンタイプ、ゴリラタイプ、チンパンジータイプ、ボノボタイプに分けた。大まかにオランウータンは職人気質、自己主張せず安定志向のゴリラ、積極的で勝ち負け重視のチンパンジー、空気が読める話好きのボノボと分類して、社員に自分はどのタイプで、周囲の人はどのタイプか考えてもらう。4つのタイプには長所もあれば短所もある。

 

 そのタイプがわかることで、新規にプロジェクトを始めるときはどんなメンバー構成を考えればいいか、といった仕事の割り振りに活用することでチームの活性化が図れる。こうした研修制度を通じて、イキイキと働ける職場づくりに成功しており、「エブリイで働きたい」という人も多い。全国的に食品スーパーでもパート社員などの人手不足が問題化しているが、幸いなことにエブリイで働きたいという主婦層に恵まれ、また友達を紹介してくるといったこともあって危機感はない。

 

株式会社エブリイホーミイホールディングス代表取締役社長岡﨑雅廣氏

 エブリイホーミイグループとして19年に売上高1000億円は視野に入ってきており、社内では「2000億円に向けてのチャレンジ元年」と言っている。これにより2000億円を達成するために何が足りないか、ヒト・モノ・カネはどうなのか、流通ネットワークはどうあるべきかなど、社員が自ら改革を進めるようになる。2000億円を達成した未来から現在を振り返って、今、挑戦すべきことが自ずと見えてくるというわけだ。

 

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