セントラルキッチンの仕組みとは?メリットやデメリット、導入の検討手順も解説

読み方:せんとらるきっちん
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セントラルキッチンのイメージ
セントラルキッチンとは、飲食店やスーパー、学校、病院など複数の場所で料理・食品を提供する事業において、調理のおもな工程を一手に引き受ける施設のことだ。複数の店舗や施設で別々に行なっていた作業を、1ヵ所に集約することで効率化が図れる。また、調理作業の集約により品質管理や人材育成が容易になる点や、新規出店時に大きな調理施設が不要になる点も大きなメリットだ。

近年の外食経営でよく用いられている、セントラルキッチンシステム。導入するとどのようなメリットがあるのか、セントラルキッチンでの調理からお店で料理が提供されるまでの仕組みはどうなっているのか、気になる方は多いだろう。

本記事では、セントラルキッチンの概要や仕組みに加え、メリットとデメリット、さらに具体的な検討のステップを紹介する。この機会に、ぜひセントラルキッチンシステムの理解を深めよう。

セントラルキッチンとは

セントラルキッチンとはどのようなシステムなのか、その概要や仕組み、必要な設備を解説する。

セントラルキッチンの概要と仕組み

セントラルキッチンとは、飲食店やスーパー、学校、病院など複数の場所で料理・食品を提供する事業において、調理のおもな工程を一手に引き受ける施設のことだ。複数の店舗や施設で別々に行なっていた作業を、1ヵ所に集約することで効率化が図れる。また、調理作業の集約により品質管理や人材育成が容易になる点や、新規出店時に大きな調理施設が不要になる点も大きなメリットだ。

セントラルキッチンが調理工程のどの段階までを担うかは、事業形態によって変わることが多い。例えば、スーパーで販売する惣菜をセントラルキッチンで調理する場合、以下のような流れとなる。

  1. セントラルキッチンで調理・包装
  2. 適温保存
  3. 各店舗へ配送
  4. 店頭に陳列

また、飲食店で提供する料理をセントラルキッチンで調理する場合の流れは、以下のとおりだ。

  1. セントラルキッチンで調理
  2. 冷蔵・冷凍保存
  3. 各店舗へ配送
  4. 再加熱・盛付
  5. 配膳

スーパーなら、消費者へそのまま提供できる状態までセントラルキッチンで仕上げられるが、飲食店なら配送先での再加熱や盛付が必要になるだろう。このような側面からも事業モデルに合わせて柔軟にシステムを設計することで、コストの最適化が実現可能となる。

セントラルキッチンに必要な設備

セントラルキッチンには、個別店舗より大型の調理設備や冷蔵庫、冷凍庫などが必要となる。複数の店舗・施設への料理提供を一手に引き受けるため、大量の食材を扱える規模が必要だ。また、調理後の料理や食品を各店舗に配送するまで保管するためのスペースや、冷蔵・冷凍での配送手段も確保しておく必要がある。

セントラルキッチンは大規模設備のため、初期投資のコストも大きなものになるだろう。しかし、配送先の店舗・施設における調理設備が最小限で済むため、総合的に見れば投資メリットが上回るケースは多く、調理をともなうさまざまな業態で採用されているのだ。

セントラルキッチンを導入する5つのメリット

セントラルキッチンのイメージ

セントラルキッチンを導入すれば、具体的に以下5つのメリットが得られるだろう。

  • 調理作業を効率化できる
  • 料理の品質が安定する
  • 人件費・賃料などのコストを削減できる
  • 調理者の育成が容易になる
  • 店舗増により利益率が向上する

調理作業を効率化できる

1つ目は、各店舗で行なっていた作業を1ヵ所に集約することで、調理作業の効率化が図れる点だ。一度に処理するボリュームが大きいため、作業が細切れにならずまとまった量を一気に調理することが可能となる。

また、セントラルキッチンを採用せず各店舗で調理を行なう場合、一人の調理者がさまざまな業務を担当するだろう。一方、セントラルキッチンでは物量が多いため、一つひとつの作業を細かく切って分担することが多い。結果として、それぞれの調理者が自身の担当作業に習熟しやすく、さらなる効率化が図れるのだ。

料理の品質が安定する

2つ目は、調理担当者や調理場所がセントラルキッチンに集約されるため、品質が安定化しやすい点だ。セントラルキッチンから出荷する前の品質チェックを徹底すれば、安定したクオリティの料理・食品を提供できる。

セントラルキッチンがない場合、各店舗における監督者や調理担当者の力量に任せる部分が大きく、品質にばらつきが出やすい。管理する拠点や人員が増えれば、品質維持の難易度も上がるのだ。

人件費・賃料などのコストを削減できる

3つ目は、人件費や賃料といったさまざまなコストを削減できる点だ。

人件費については、各店舗で個別に行なっていた調理担当者の採用・教育がセントラルキッチンに集約されるため、大幅な削減に期待できる。賃料についても、各店舗の調理スペースが不要となるか、もしくは少なく済むため、従来よりも小さな敷地での営業が可能となるだろう。

セントラルキッチン用の土地や建物の確保は必要だが、1ヵ所に集約できるためトータルのコストは下がる可能性が高い。また、店舗と違ってセントラルキッチンへの集客は不要なため、不動産価格の相場が低い地域で選ぶことが可能なのだ。

セントラルキッチンの導入により部分的には費用が増える箇所もあるが、全体としては大きなコスト削減につながるだろう。

調理者の育成が容易になる

4つ目は、各店舗や施設での採用・教育が不要となることで、調理者の育成が容易になる点だ。セントラルキッチンにおける教育・管理体制に集中できるため、きわめて効率的といえる。

セントラルキッチンを採用していない場合、各施設での調理レベルを高く維持するためには、調理工程のマニュアル化や各監督者への周知徹底、定期的な監査などさまざまな労力がかかるのだ。

店舗増により利益率が向上する

5つ目は、店舗を増やせば増やすほど利益が出やすい構造になる点だ。

セントラルキッチンシステムを採用すれば、各店舗における調理スペースや調理担当者は不要になる、もしくは少なく済む。そのため、各店舗にかかる家賃・人件費は大幅に削減される。一方で、セントラルキッチンにかかる初期投資、固定費は基本的に一定だ。

もちろん、セントラルキッチンへの追加投資が必要になるケースもあるが、全体的な構造としては出店すればするほど利益が出やすい仕組みだといえるだろう。

セントラルキッチンを導入する3つのデメリット

一方で、セントラルキッチンシステムにはデメリットも当然存在する。具体的には以下3つの点が挙げられるだろう。

  • 初期投資がかかる
  • お客様の声が届きにくくなる
  • 新たな衛生管理が必要になる

初期投資がかかる

1つ目は、導入時に大きな初期投資が必要になる点だ。

セントラルキッチンを導入するには、土地や建物のほか、調理用の大規模な設備が不可欠だ。調理を終えたあと、出荷するまでの保管スペースや配送方法なども確保する必要がある。

セントラルキッチンを導入する際は、各店舗で削減できる人件費や賃料などのメリットと比較し、費用対効果を見極めることが大切になる。情報を整理することで、投資メリットを得るために必要な店舗数や販売規模といった目標ラインが見えてくるだろう。

お客様の声が届きにくくなる

2つ目は、調理場と飲食スペースを切り離すことになるため、クレームやお褒めの言葉などお客様の声が届きにくくなる点だ。

各店舗で調理を行なう場合であれば、お客様からのフィードバックを調理場監督者に迅速に伝え、必要な対応を取ることができる。しかし、セントラルキッチンシステムでは調理場が離れているため、すぐに伝えることは不可能だ。

お客様からの貴重な声をムダにしないためには、確実にフィードバックするための仕組みを構築しておくべきだろう。

新たな衛生管理が必要になる

3つ目は、セントラルキッチンからの配送形態(冷蔵・冷凍など)に合わせた保管・配送時の衛生管理が必要になる点だ。

各店舗で調理を行なう場合は、調理完了後すぐに料理・食品を提供するため、保管や配送は不要だ。一方、セントラルキッチンでは調理後に品質を落とさないまま配送できるよう、徹底した衛生管理が求められる。配送テストや包装方法の工夫なども必要になるだろう。

保管・配送時の新たな衛生管理は必要になるが、管理すべき拠点がセントラルキッチンに集約される点はメリットだ。個別店舗での管理が少なく済むため、全体としては効率的だといえる。

セントラルキッチン導入の検討手順

セントラルキッチンで働く人

セントラルキッチン導入の検討は、以下3つの手順で行なう。投資メリットを引き出すためには、ビジネスモデルに合った最適な形を模索することが大切だ。

  1. セントラルキッチンが担う役割を明確にする
  2. 必要な敷地・設備・人員を洗い出す
  3. 現状とのコスト比較を行なう

セントラルキッチンが担う役割を明確にする

まずは、コスト・効率などの面から、セントラルキッチンが調理工程のどこまでを担うのかを検討する。下処理だけなのか、提供できる段階まで仕上げるのかでは必要な設備が大きく異なるからだ。しかし、コストを追求するあまり品質が疎かになっては本末転倒だ。

例えば、セントラルキッチンで盛付まで行なうかどうかによって、以下のような違いがある。

  • セントラルキッチンで盛付まで行なう:作業工程としては効率的だが配送中に中身が崩れる可能性がある
  • 盛付を各店舗で行なう:配送後の作業が必要になるがベストな状態で料理を提供できる

自社が提供する料理の特性を踏まえ、作業効率・品質・コストなどさまざまな観点で最適な役割分担を模索することが必要だ。

必要な敷地・設備・人員を洗い出す

次に、各店舗への配送をまかなうために必要な敷地や設備、人員を洗い出す。

各店舗への配送効率を考えた立地や、将来的な規模拡大を見据えた建物・設備の設計が重要だ。また、セントラルキッチンでの調理に必要な人員と、各店舗から削減できる人員も整理しておくべきだろう。

投資回収の可能性を高めるには、綿密な計画が不可欠だ。

現状とのコスト比較を行なう

最後に、セントラルキッチン導入により削減できる各店舗のコストの合計と、新規にかかるコストを比較して投資判断を行なう。

セントラルキッチンシステムでは、店舗が多ければ多いほど利益が出やすい仕組みになる。気を付けたいのは、投資額の回収を早めるために、非現実的な出店計画を立ててしまうことだ。リスクを避けるためには、将来的に規模を拡張できる土地・建物を確保しながらも、まずは小さく稼働を開始するほうがよいだろう。

品質管理や作業員の教育が安定した段階で、規模の拡張を進めるのが理想的だ。

まとめ

セントラルキッチンシステムは、各店舗で行なっていた調理作業を1ヵ所に集約させ、効率化を図る手段として、飲食店・スーパー・学校・病院などで幅広く採用されている。うまく機能すれば、事業全体に大きなメリットをもたらすはずだ。

ただし、導入の検討に際しては、セントラルキッチンが担う役割の明確化や必要な設備の洗い出し、現状とのコスト比較を入念に行なう必要がある。将来的な拡大を見据えながらも、まずは小さく始めて安定した稼働を目指すのがよいだろう。

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