第43回 マルイが先鞭し増え続ける「売らない店舗」 ビジネスモデルとマネタイズの正しい理解とは
最近話題の「売らない店舗」。いち早く「マルイ」(社名は丸井グループ、東京都)が提唱し、今は一種のブームの様相だが外形だけを模倣されることも多い。では、この「売らない店舗」の本質的な価値とそこから生み出される収益をどのように考えるのか。今号のテーマとする。
「売らなくても良い」店ならスタッフもお客もハードルが下がる
マルイが定期的に発行する共創レポートに、初めて「売らない店舗」が登場した時の説明は驚きだった。
店舗側はお客に売ろうとする。至極、当たり前のことだがお客が買う気も無くフラッと入ったアパレル店舗にも関わらず、横からあれこれ店員に声をかけられ、時には言葉巧みに着せられ挙げ句に買うこともある。ただ、これもお客の選択だし、購買の結果、「良い買い物が出来た」と満足感を得てもらえれば何の問題も無い。むしろハッピーに終わる。しかし、望んでいなかったのに「何となく誘導された」とお客が感じたら後味も悪い。お客もそんな結果をイメージすると、ついお店に入ることをためらうことにもなる。
逆に店舗に入ってきたお客に買わせようと店舗スタッフは接客というプッシュ型の行動に出る。店舗スタッフは「売らなきゃ」「予算達成しなきゃ」と考えれば考えるほどプレッシャーもかかる。
もし、ここに「売らなくてもいい」というオプションがあれば、店舗スタッフのプレッシャーは低減し、お客に思う存分商品説明に時間を費やすこともできる。
お客も買わなくていいと思えば店舗へ入るハードルは下がり店舗スタッフの説明に聞き入ることもできる。
この双方の思いは、売ることを目的に作られた店舗を「売らない店舗」にすることで店舗側とお客、双方のストレスを軽減し、店舗を快適な場所に変え、もっと楽しい場所になるはず。
こんなことが当時の共創レポートに書いてあった。さすがマルイ、面白いことを言うものだと感心した。
売らない店舗がSCにとって「困った存在」である理由
この売らない店舗の考え方は、ユニークだ。だが、元々不動産賃貸業のショッピングセンター(以下、SC)の立場からは微妙である。
まず、
続きを読むには…
この記事は DCSオンライン会員(無料)、DCSオンライン+会員限定です。
会員登録後読むことができます。
DCSオンライン会員、DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営 の新着記事
-
2024/09/13
第98回 百貨店とSC、「インバウンド一色」への懸念とは -
2024/08/30
第97回 減少続く…データで見る2023年度のSC動向 -
2024/08/15
第96回 ショッピングセンターの売上がいま“なぜか”好調な理由とは -
2024/07/31
第95回 マーケティングの「4C」が変える小売業の価値とは -
2024/07/15
第94回 単なる「公園」ではない、パーク・リテールの真の意味とは -
2024/06/27
第93回 ショッピングセンターが直面する「7大リスク」とは何か?
この連載の一覧はこちら [98記事]
関連記事ランキング
- 2024-03-08ストア・オブ・ザ・イヤー2024を発表!今、行くべき店はこの店だ!全42店舗掲載
- 2024-08-15第96回 ショッピングセンターの売上がいま“なぜか”好調な理由とは
- 2024-08-30第97回 減少続く…データで見る2023年度のSC動向
- 2024-04-05第88回 減少、閉鎖続く!2023年度のSC動向まとめと24年以降の展望
- 2024-03-18拡大するイオンリテールの都市型SC「そよら」、好調要因とは
- 2024-09-13第98回 百貨店とSC、「インバウンド一色」への懸念とは
- 2021-09-07フジがイオングループのSCに初出店、食品スーパー「フジ四国中央店」
- 2022-02-10第40回 2021年のショッピングセンター総括と、コロナ後、売上はどこまで戻るのか?
- 2023-07-06ショッピングセンターに少人数向けカラオケ「COCOKARA」の設置が加速! その理由に迫る
- 2024-03-12「日本流」台湾へ、テナントと連携したららぽーと台中の新しいSC づくりとは