「バスチー」大ヒットに導いた! 群を抜く、ローソンのデザートマーケティング
「新感覚」の提案に成功
なぜ「バスチー」はヒットしたのか――。
大きな要因としてまず、消費者に「新感覚」を訴求した点が挙げられる。バスク風チーズケーキは、表面の生地はこんがり焼かれているのに対し、中身はとろりとなめらかな食感であるのが特徴だ。
昨年の夏ごろから専門店を中心にじわりと人気を集めていたことにローソンのスイーツの開発担当者が着目。日本ですでに浸透している「レアチーズケーキ」や「ベイクドチーズケーキ」とは異なる「新感覚スイーツ」として打ち出し商品化した。このように、今まで味わったことのないタイプのスイーツが、身近なコンビニエンスストアで、手頃な価格で購入できるという点が支持獲得につながった。
SNSでの発信を考慮したネーミングとパッケージ
次にヒットの要因として、商品部とプロモーション部が連携を図り、効果的なプロモーション活動を実現できるように商品設計段階から工夫をした点も挙げられる。
とくにこだわったのは商品名とパッケージだ。SNSで多くの人に発信してもらいやすいように「バスチー」という短い名前にしたほか、パッケージは“SNS映え”を考慮して鮮やかな黄色をベースに、商品名を中央に大きく載せた。その結果、「Twitterでのリツイート数はこれまでのスイーツ商品の中でもトップクラスで多い」(プロモーション部の鈴木啓子氏)という。
竹増社長の方針のもと積極的に行っていること
最後に、近年ヒット商品を連続で生み出しているローソンのスイーツ商品の開発体制にも触れておきたい。17年に「GODIVA」との共同開発商品シリーズが大きくヒットして以降、デイリー部のスイーツ開発担当者の人員体制を1人増やし、現在は3人の女性による女性目線での商品開発を行っている。
加えて最近、竹増貞信社長の考えのもと積極的に行っているのが海外視察だ。たとえば「バスチー」も実際にマーチャンダイザーの1人がバスク地方に赴き、本場の味を商品化できるようにした。7月に韓国を視察したという前出の坂本氏は「大きな角切りバターを挟んだトーストが大流行しているなど、日本にいるだけでは得られない新鮮な発見が多くあった」と語る。このように新しい切り口の商品を開発するための情報収集をこれまで以上に強化している。
現在、ローソン全体に占めるスイーツの売上高構成比は5%弱だという。その割合は大きくないものの、スイーツの購入者は一般的な顧客と比較して客単価が1.2倍ほど高くなるほか「スイーツは嗜好性が高く、来店動機の創出につながる」(坂本氏)という。
20年2月期のローソンの既存店売上高の前年同月比を見ると、3月こそ99.7%と前年割れしているものの、4月は101.5%、5月は102.1%、6 月は101.0%と、いずれも客単価が向上したことにより前年を上回っている。
業態の垣根を越えた出店競争が激化し客数減に歯止めがかからないなか、客単価の向上や来店動機を創造する有効な施策としても、コンビニエンスストアのスイーツ競争は今後さらに熱を帯びてきそうだ。