新生ASTを起点に加速するイオングループDXの現在地
CDPの構築進みついに活用フェーズに
イオンが顧客IDの統合やアプリの利便性向上を通じてめざすのがOMOの実現である。同社のOMOは、オンラインと実店舗を融合し、顧客がどこで買物をしてもシームレスな購買体験を提供することを目的としている。
そのためにまず、事業会社各社が運営するネットスーパーをiAEONアプリに統合、もしくは連携して顧客の利便性を高めた。「ネットスーパーを含むECの売上は毎年2ケタ成長を続けており、コロナ禍後も安定している。これはECがすでに生活基盤の一部として定着している証拠であり、今後も順調に成長すると考えている」と関矢氏は話す。
そのほかiAEONをデータ収集・活用基盤としたCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の構築を進めており、「すでにシステムの実装を終え、活用フェーズに入っている」(関矢氏)という。
CDPを活用したマーケティングオートメーションでは、オンラインと実店舗での購買データを統合し、過去の購入履歴や行動データを基に、顧客ごとに最適なクーポンを配布し、広告キャンペーンを展開することが可能となる。
具体的には、離反した顧客に対して広告を打ったり、ABテストの結果から効果的なマーケティング施策を導き出したりといった具合だ。関矢氏は、「CDPを活用した販売施策を行った場合、行っていないお客さまと比べて購買金額が1.5倍に増加するケースも見られた」とその手応えを話す。
イオンアイビスとの統合で、開発がよりスムーズに
さらに24年12月、同社は、イオンアイビス(以下、アイビス)のIT事業を統合した。統合前は、ASTがiAEON、CDP、ECといったいわゆるフロントエンド、そしてID統合やシステム連係の基礎となる「ASP(イオン・スマート・プラットフォーム)」を構築するミドルウェアを担い、イオンアイビスがPOS、会計、商品マスタなどのバックエンドのシステムを扱っていた。
従前の体制では、フロントエンドとバックエンドが異なる組織で管理されていたためデータが分断され、POSデータや購買履歴をリアルタイムで統合できず、マーケティング施策や販売戦略の最適化が遅れる要因となっていた。また、システム開発の重複が発生し、余計なコストが発生するという課題もあった。
関矢氏は、「今回の統合でPOSデータをはじめとするバックエンドシステムがスムーズに基幹システムやフロントエンドとつながり、データをリアルタイムで活用することが可能になった。今後、システム開発コストの削減が見込めるほか、新しいデジタルサービスの開発がスピーディに進められる見込みだ」と話す。
ASTでは現在、グループ内からの出向者や中途採用者を含め約420人が活躍している。関矢氏は、「事業会社から出向してきた社員が、成長して自社に戻ることで、グループ全体にデジタルの理解が深まる循環ができれば」と語る。グループ全体のDX推進の起点である同社は、デジタル人材を育成するセンターの役割も担っているのだ。
イオンのデジタル戦略は、iAEONの進化やiAEON IDを軸としたデータ統合を中心に進化を続けている。これらの取り組みを加速することで、イオンはデータドリブンな戦略を強化し、顧客ニーズに即した新しい購買体験を創り出していく考えだ。






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