新生ASTを起点に加速するイオングループDXの現在地
※本記事はダイヤモンド・チェーンストア3月1日号別冊「流通テクノロジー」の一部記事を再編集したものです。文中の所属・肩書等は発行時点のものです。
イオンスマートテクノロジー(千葉県/羽生有希社長:以下、AST)は、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)が推進するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の基盤となるインフラを担う企業として、2020年に設立された。
同社が開発・運営するグループトータルアプリ「iAEON(アイイオン)」はローンチから3年4カ月でダウンロード数が1300万を超えるなど、順調に利用者を拡大。24年12月には、イオンアイビス(千葉県/橘川貴文社長)のIT事業を統合し、グループDXを加速させる体制を整えている。
「iAEON」活用で顧客IDの統合めざす
イオンは、グループ全体のデジタルシフトを実行するための基盤を整備する機能会社として、20年にASTを設立した。

設立当時、グループにおけるデジタル推進の取り組みは、各事業会社が個別に取り組んでいたため、統一的な戦略やシステムが存在しなかった。そうしたなかグループ全体でのデジタル戦略の統合が急務とされ、デジタルシフトの基盤整備を担う企業としてASTが設立された。
同社副社長の関矢充氏は、「デジタル推進においてとくに大きな課題であったIDの統一を主として進めた」と話す。当時、イオングループでは、顧客IDは各事業会社が独自で保有・運用しており、データが一元化されていなかった。
そこで21年にイオングループ全体のIDを統合するプラットフォームとして、アプリの「iAEON」をリリース。アプリを基軸に顧客IDを「iAEON ID」として統一し、グループを横断して活用しようと考えた。
ASTは各事業者が運営してきた顧客IDをiAEON IDに移行するための認証基盤を構築。事業会社のサイトを通じて顧客にiAEONアプリへの移行を促すことで顧客IDの統一化を図ってきた。
現在、グループの事業会社38社がイオンアプリを導入している。一方、事業会社の自社アプリやECにiAEON IDを導入するケースもあり、どちらの手法を選ぶかは事業会社によって異なるが、関矢氏は、「グループ会社の意向に沿ってサポートしていきたい」と話す。
ダウンロード数1300万を突破!
一方、アプリの利便性向上も抜かりはない。スマートフォン決済「AEON Pay(イオンペイ)」などグループ企業の数十のアプリの機能を統合するほか、「イオンラウンジ」の予約、電子レシート機能といった多彩な機能を搭載している。
イオングループ各社の店舗を最大10店舗まで登録することも可能で、登録した店舗のお得情報やクーポンが提供され、利用者に高く評価されているという。
また、24年11月に実施されたアプリの改修により、会員コードと「AEON Pay」の決済が1回のバーコード読み取りで完了する仕様となり、さらに利用率が高まった。アプリのダウンロード数は25年1月末時点で1300万を超え、小売業が提供するアプリのダウンロード数としてはトップクラスといえるだろう。
関矢氏は「月間利用者数(MAU)を見るとアクティブなユーザーが多いことから、顧客からの支持を得ているという手応えを感じている」と自信をのぞかせた。
今後はUIの向上や基幹システムとの連携強化などにより利便性を高めてユーザーの満足度を向上させることで、25年度は累計ダウンロード数3000万をめざす考えだ。
それにあたって、アプリ利用者拡大に向けた施策も強化している。各事業会社が、ASTのサポートチームも事業会社の担当者とコミュニケーションを取りながら、ともにアプリの普及促進をめざす企画を立案しているという。
たとえば、iAEONアプリリリース3周年を記念した企画では、人気キャラクターとのコラボや事業会社と連携したインナーキャンペーンが奏功し、既存顧客ユーザーの維持率向上、新規会員の獲得にもつながるなど大きな反響があった。
今後はZ世代をはじめとする若年層へのアプローチが課題だという。関矢氏は、「SNSやIPコラボレーションを活用して、若い世代との接点を増やしていきたい」と意気込んだ。
