青果流通サプライチェーンの変革に挑む! ある地方卸売市場の挑戦
私たちが日ごろ口にする野菜や果物(青果物)のサプライチェーンの調整役を担っている青果卸売市場。しかし、生産者の高齢化・後継者不足、人口減少、さらには気候変動など、卸売市場を取り巻く環境は激変し、淘汰・再編が進んでいる。その中で、高知県西部で地方卸売市場を運営する須崎青果が経営改革の一環で導入したのが、日本事務器が提供する農家と市場・青果卸を対象とした業務改善アプリ「fudoloop(フードループ)」だ。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)による変革が立ち遅れている印象のある第一次産業。須崎青果は青果卸売市場、ひいては青果流通のサプライチェーン全体のDXにどう取り組もうとしているのか。同社代表の市川義人氏に聞いた。
青果卸売事業者は30年でほぼ半減
「まさかキャベツが1玉500円、1,000円の時代が来るとは……最近の気候変動は本当に読めない」。市川氏は、こう言って苦笑いを浮かべる。
農家などの生産者とスーパーマーケット・仲卸などの販売先をつなぎ、青果流通におけるサプライチェーンの調整役を果たす青果卸売事業者。ただ、普段は表に出ない存在だけに、一般的にはその役割がわかりにくい。そこで、まずは青果流通市場全体のアウトラインから見てみよう。
下図は、青果流通市場の概略を表したものだ。

ここには主なプレーヤーとして、生産者(農産物を生産する個別農家、大規模農業法人など)、市場・青果卸(卸売事業者など)、販売先(仲卸、スーパーマーケットなどの小売店)の3者が存在する。これらの3者による青果流通のサプライチェーンの流れは次のとおりだ。
- 生産者は市場・青果卸に対して収穫した青果物を出荷する。
- 市場・青果卸は、販売先を対象に出荷した青果物を卸す。
- 販売先の仕入れた青果物は、小売店(スーパーマーケットなど)の店頭にて消費者へと届けられる。
青果流通市場を取り巻く環境は、この20年の間に大きく変化している。
まず、生産者は高齢化・後継者不足を背景に年々減少している。農林水産省の統計によると、農業経営体数は2010年から2020年にかけての10年間で35パーセント減少しており、大規模農業法人による集約も進んでいる。
生産者数の減少は、必然的に仲介役である市場・青果卸にも影響をおよぼす。卸売事業者の統廃合が進み、青果卸売事業者数(中央・地方合計)はピークだった1032事業者(1991年)から、526事業者(2020年)にほぼ半減。取扱金額も50927億円(1991年)から31254億円(2020年)へと大きく減少した。コロナ禍などを境にECや産地直送などの市場外流通が増えたことも要因の一つだ。
