青果流通サプライチェーンの変革に挑む! ある地方卸売市場の挑戦
出荷情報のビッグデータ化による「三方よし」の未来

ただ、高齢化の進む第一次産業だけに、デジタルツールそのものに抵抗を感じる生産者は少なくない。取引先を回りながらフードループの活用を地道に呼びかけているが、「ナスを収穫しているときに手袋をつけながら入力なんてできないよ!」と門前払いされることもあるという。
できるだけ入力項目を少なくしたり、文字を大きくしたり。生産者からの声はフードループを展開する「日本事務器」にフィードバックし、同社が機能改善に努めている。
また、個々の生産者同士はライバルでもあり、出荷情報をオープンにしたがらない傾向があるという。しかし、他の農家も含めた全体の出荷量が把握できれば、生産者にとっては作りすぎによる値崩れなどを避けることができる。「むしろ情報をオープンに共有することが、結果として利益となって還元されることを、これからも地道に説明していきたい」(市川氏)
正確な出荷情報を欲しているのは、仲卸やスーパーマーケットなど販売先も同様だ。「生産者から集約する情報が増え、出荷予測の精度を高めることができれば、きちんとした根拠にもとづいた価格交渉ができるようになる。販売先に対しても『今は少し高いけれど、1週間後にはこれくらいの価格で提供できます』『この時期に出荷量が増えるので特売を打ってみたらどうでしょうか』といった付加価値の高い提案もできるようになる」(市川氏)
フードループを利用する生産者が増えれば増えるほど、出荷情報のデータがアプリ上にさらに集約・蓄積され、ビッグデータ化する。そのビッグデータにもとづく正確な出荷情報を、卸業事業者・生産者・販売先の3者間で共有し、それぞれの経営戦略に活用することが、「三方よし」の青果卸売市場の健全化につながるのだ。その未来の実現に向けた須崎青果の、そしてフードループの挑戦は、まだ始まったばかりだ。