売上5倍・購入率50%超も! グリーンビーンズが示すリテールメディアの未来

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

イオンネクスト(千葉県)が運営するネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」におけるリテールメディア事業は、「とある施策」の実施後に売上高が5倍、広告経由の購入率は50%となるなど、驚異的な成果をあげている。そのカギは「クローズドループ化」――。誰が見て、誰が購入したかを徹底的に可視化する仕組みにある。革新性に満ちたグリーンビーンズの戦略と、次なる一手に迫る。

配送クルーを活用し、メーカーの商品サンプルを顧客に手渡しする「サンプリング」を実施

イオンネクストのリテールメディア戦略の中核「クローズドループ化」とは

 イオンネクストは、ネット専用スーパーのグリーンビーンズを基盤に、ECサイトを広告・販促・購買データが循環する「マーケティング・プラットフォーム」として発展させるリテールメディア事業を推進している。

イオンネクストでリテールメディア事業を統括する藤田泰寛氏
イオンネクストでリテールメディア事業を統括する藤田泰寛氏

 イオンネクストでリテールメディア事業を統括する藤田泰寛氏は「リアル店舗で培った商品棚を軸にした販促やデータ分析をデジタル空間に移行させ、ECを新たなマーケティングの場として再定義する」と説明する。その中核となるのが「クローズドループ化」だ。広告や販促がどの顧客に届けられ、購買行動にどうつながったかを可視化し、その結果を次の販促施策に反映する仕組みである。

 この仕組みを支えているのが、自前の配送体制である。グリーンビーンズは、顧客フルフィルメントセンターを活用し、商品保管から配送までを自前で一貫運営しているのが特徴だ。この仕組みを活用し、顧客IDを起点に、広告の閲覧履歴から購買、配送完了後の行動までのデータを一元的に把握・分析できる環境を構築している。

 このリテールメディア事業は、立ち上げから3年計画のもと段階的に拡大してきた。初年度の23年度は「Learning(=学習)」フェーズとし、約20社のメーカーとジョイント・ビジネス・プログラム(JBP)を組み、小規模な施策を繰り返し、課題抽出と解決策の検証を進めた。24年度は「Introduction(=導入)」フェーズとして参画メーカーを40社に拡大し、得られた知見を水平展開してきた。現在の25年度は「Growth(=成長)」フェーズに入り、参画メーカーを80社まで拡大し、施策の本格化が進んでいる。

 リテールメディア市場全体の成長も、こうした取り組みを後押ししている。CARTA HOLDINGS(東京都)によれば、国内リテールメディア広告市場は24年時点で4692億円規模に達しており、28年には約1兆845億円まで拡大すると見込まれている。とくにECを活用したプラットフォーム型リテールメディアが市場全体の約9割を占めるとされ、ネットスーパーというプラットフォーム上での販促やデータ活用の重要性は今後さらに高まっていく見通しだ。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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