売上5倍・購入率50%超も! グリーンビーンズが示すリテールメディアの未来

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

日本のリテールメディアに求められる次なる一手とは…

 グリーンビーンズは現在の4つの施策に加え、口コミやSNSを使った販促・データ活用施策を「第5の柱」として組み込もうとしている。藤田氏は「日本の消費者は口コミを非常に重視する。優れた広告だけでは購買に至りにくく、『誰かの評価』が必要になる」と話し、日本市場特有の消費者行動に合わせた新たな施策が不可欠と見ている。実際、日本では近年、TikTokやX(旧Twitter)などのSNSが、商品の評価や口コミを共有する場として購買に大きな影響を与えている。

 こうしたSNSとECの融合型販促はグローバルでも広がっており、とくに中国市場ではTikTokが動画投稿とECを一体化した「動画コマース」型チャネルとして成長(23年取扱高200億ドル超)、米国でも「TikTok Shop」としてEC機能の展開が進んでいる。こうした動きを踏まえ、グリーンビーンズでも「口コミ×リテールメディア」型の取り組みを次の段階として構想している。「口コミとリテールメディアの融合は、今後の市場競争を左右する“次の一手”として、業界内でも関心が高まっている」と藤田氏は述べる。

 このように、イオンネクストはグリーンビーンズを「ネットスーパー領域でNo.1のリテールメディア」に育てることをめざし、広告・購買データの循環活用を本格化させている。藤田氏は「正解のない分野だからこそ、失敗を繰り返しながら学び、イノベーションを起こす」と力を込める。 参画メーカーの拡大や新たな施策の導入が進むなか、今後もデータ活用による販促効果の高度化を追求し、収益モデルの新たな柱としてリテールメディア事業の成長をさらに加速させていく考えだ。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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