売上5倍・購入率50%超も! グリーンビーンズが示すリテールメディアの未来

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

柱とする4つの施策とは

 グリーンビーンズのリテールメディア事業は、①サンプリング、②バナー広告、③商品検索広告(デジタルシェルフ)、④購買データ提供、の4つの施策を柱としている。

 1つ目の「サンプリング」は、配送クルーを活用し、メーカーの商品サンプルを顧客に手渡しする施策だ。クルーが配送時に商品を手渡しする際、「実際に試しておいしかった」「お子さんがいる家庭で好評だった」といった体験談を添えて紹介する。このコミュニケーションが“移動式マネキン”として機能し、購買を後押しするというわけだ。実際に、サンプル配布後は当該商品のレビュー数が数倍に増えるなど、明確な効果が確認されている。

配送クルーを活用し、メーカーの商品サンプルを顧客に手渡しする「サンプリング」を実施
配送クルーを活用し、メーカーの商品サンプルを顧客に手渡しする「サンプリング」を実施

 さらに、顧客の年齢・性別・家族構成・購買履歴といった属性に基づき、配布対象のセグメント設定ができるのも特徴の1つ。「誰に届けたか」が明確になるため、サンプリング後の購買行動も追跡でき、メーカーに購買転換率やリピート率をフィードバックできるのが強みとなっている。ある飲料商品の事例では、サンプル配布後に売上が5倍に伸びるなど、具体的な成果も見えているという。

 2つ目の「バナー広告」では、グリーンビーンズのトップページに掲載するバナー広告枠を広告商品として販売している。とくに特徴的なのは、TVCMとのリアルタイム連動の仕組みだ。テレビで放映された商品が、同時にグリーンビーンズのトップページに掲載され、視聴から即購入への導線を提供している。これにより、クリック率(CTR)や購入転換率(CVR)の改善にもつながっている。藤田氏は「テレビという強力な媒体とオンラインでの即時購入を連動させることで、広告効果は劇的に向上する」と話す。

 3つ目の「商品検索広告(デジタルシェルフ)」では、サイト内でユーザーが検索したキーワードに応じて、検索結果ページの上部など目立つ位置に特定の商品を優先表示する広告枠を提供している。広告はクリック課金型の仕組みで、広告主(メーカー)は「検索結果内の優先表示枠」を活用し、該当する商品や関連商品を効率的に訴求できる。

 実店舗のように棚スペースの制約がなく、検索結果を活用できるため、中小メーカーやニッチな商品でもターゲット層に効果的にアプローチすることが可能だ。さらに、クリック後、購入に至ったコンバージョン率も高く、ある食品カテゴリーでは購入率が30~50%に達するなど高い販促効果が実証されている。23年後半から成長が加速し、同年12月時点で検索広告経由のEC売上比率は43%に達した。

 4つ目の「購買データ提供」では、匿名化された顧客の購買履歴や属性データを、メーカーがダッシュボード上でリアルタイムに分析できる仕組みを整えている。これにより、SKU単位や週次・月次単位での販売動向が把握でき、販促施策の改善に活用可能だ。また、価格変動による消費動向をリアルタイムで捉え、広告を適切なタイミングで投入することで、広告費対効果(ROAS)が4倍以上に向上した事例もあるという。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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