その名を知らずに月間3000万人以上が利用する「マイベスト」とは
公平性を追求し1人1人に“マイベスト”な最適解を
マイベストは2016年に、某比較サイトの運営企業の新規事業責任者だった吉川徹CEOが創業。今は連結子会社としてLINEヤフーの傘下にある。
アフィリエイト収益を得るマイベストの記事では主に「Amazon」「Yahoo!ショッピング」「楽天市場」などのECモールに送客するケースが多いが、「グループ会社という立場からYahoo!ショッピングへ主に送客をねらうようなことはまったくない」と佐藤氏は言い切る。
「大型セールがある場合はバナーを載せるなどの施策を行っているが、それはどのECモールに対しても同様だ。ユーザーにとって便利なモールで購入してもらえればよいのでフラットに掲載している」(佐藤氏)
比較サイトで認知度の高い「価格.com」や「アットコスメ」が口コミを軸にした絶対評価の総和であるのに対し、「マイベスト」は相対評価の記事が主軸となる。その多くが外部からその道のプロである専門家にも協力をあおぎ、幅広くピックアップされた主力商品を実際にすべて使用して検証している。記事を制作する編集者についても、家電量販店やベビー用品のメーカー、コスメブランドの美容部員出身など、各ジャンルの実務経験者が多く、ベビーカーの比較記事は子育て中の編集者が担当するようにするなど、専門人材が活躍している。
「たとえば家電量販店で接客経験があれば、ユーザーが何に悩み、迷うのかを理解している。ユーザーの解像度が高ければ、サイトを閲覧した時にユーザーをがっかりさせず、最後まで選びきれる、自分にとってベストな商品を最短で見つけ出せるコンテンツをつくれる」(佐藤氏)
マイベストのランキングには、ユーザーが属するクラスターごとにランキングを切り替えられるというユニークなポイントもある。たとえば掃除機でいえば、「吸引力を重視する人」「軽さを優先する人」でランキングが異なるほか、実店舗やコンビニ、ECモールなど主にどこで買物をするかによっても、その人にとっての「よいもの」はそれぞれ異なるという考えから、まさに「マイベスト」に辿り着くための工夫が随所に施されている。「大事なのは『誰』の『何』を解決するか。記事ごとにペルソナをつくるレベルでメイン・サブターゲットを決め、情報を積み上げている」(佐藤氏)。
マイベスト執行役員CRO クライアントサクセス部長の土橋崇之氏は「相対評価で大事なのは、評価する人のレベルや基準値。監修者や編集者の専門性にこだわり、公平性を厳格に保つからこそ、サイトに権威性が出てくる」と説明する。
「他の商品比較サービスとは『競合』というよりは『共存』の関係にあり、機会を取り合うといったような意識はない。たとえばベビー用品などは『子供が生まれるから必要に迫られているが、使った経験がない』という課題をお持ちの方によく見られている。一方で、他の口コミ系のサイトはたとえば化粧品のネガティブチェックをする時に見られるなど、ユーザーのファネルが若干違う」(土橋氏)
データ提供で新たな収益を模索中
2018年9月期に8億3000万円だった売上高を4年で4倍超の38億2000万円に拡大したマイベストだが、足元では売上高・利益ともにさらなる成長を遂げているという。さらに海外にもエリアを拡大し、日本以外でも8つの国と地域で事業を展開。アフィリエイト収益のほか、記事内に掲載する広告枠やタイアップ記事、また信憑性を表すエンブレムの提供などで広告収益も得ている。
「公平性を重視したコンテンツ内に広告を掲載する際は、『広告』であることを明確にしている。自主制作している部分と完全に切り離したかたちで表示を行い、広告が比較検討層のユーザーにおいても為になる情報を出せるよう心掛けている」(土橋氏)
実際に、同サイトで上位に紹介された直後から売上が伸びる“マイベスト売れ”ともいえる現象も起き始めている。たとえば、2021年11月に国内で初めて空気清浄機を発売した日本エイサーの商品が22年7月にマイベストの空気清浄機ジャンルで1位を獲得。すると掲載前後と比較すると売上が3.5倍に急上昇したという。
マイベストのランキングはプロモーションボリュームに左右されないため、認知度の低い商品が1位を取るケースも少なくない。プロモーションを強化していない商品は変数が入りにくく、売上が急上昇したきっかけがマイベストのランキングであると、メーカー側から見てもわかりやすい。
プロモーションに積極的で認知度のある商品や、ドラッグストアやコンビニなどで手に取りやすい商品はマイベストの影響が顕著化されにくいものの、「PV数から推察するに、潜在的には同様の現象が起きていると感じる」と土橋氏は説明する。
「すでに話がある中では、小売店における商品の理解促進の課題を解消するために、コンテンツをオフライン上で活用してもらうほか、動画や看板、ポップなどの提供もできるのではないかと検討しているところだ」(土橋氏)
佐藤氏は「アプリなどを通してマイベストの認知度も上げつつ、ECモールに行く前にマイベストを開くのが当たり前になるような状況にしていきたい」と力強く語る。