食品小売のクイックコマース、近くて便利な店舗網がカギを握る理由

宮川 耕平(日本食糧新聞社)
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徒歩数分を主な商圏とするコンビニや、小型食品スーパー「まいばすけっと」(神奈川県)のような業態が、即時配達(クイックコマース)の導入を進めています。買いに行った方が早くない? とも思う反面、近いからこそ素早く配達できるわけでもあります。クイックコマースにおいては、利用者のみならず事業者にとっても、「近くて便利」が大切なようです。

配送エリアを全国に拡げている7NOWは、8月には1万6000店規模に拡大する

食品小売のクイックコマースを可能にした3要素とは

 外食には、出前を取るというクイックコマース的なサービスが古くから存在しましたが、内食・中食を主とする食品小売には、生協宅配やネットスーパーはあっても、10分、20分で配達してくれるサービスはコロナ禍以前には難しいものがありました。それが今日のように変わったことにはポイントが3つあると思われます。

 1つ目は、クイックコマース事業者が配達インフラを提供してくれることです。6月にサービスを開始したまいばすけっとは、ウーバーイーツジャパンのインフラを利用しますし、8月から即時配達サービス「7NOW(セブンナウ)」の対象エリアを関西などへ拡大するセブンーイレブン・ジャパン(東京都)も、ラストワンマイルを埋めるのは外部の専業サービスが主体で、その中にはウーバーイーツが提供する機動力も含まれます。

 2つ目は、配達の追加料金を容認するマーケットが成立したことが大きいと思います。配達料を払い、かつ個々の商品に店頭価格からの上乗せがあってもOKとする消費者が増加したことは、コロナ禍で起きた変革の一つではないでしょうか。

 3つ目に、スマホで買えることも重要です。7NOWはインターネットからでも購入できますが、利用は圧倒的にアプリ経由だそうです。その理由は女性客が65%を占め、それも20~40代が主要層であることに関連しているはず。男性よりも女性の方がスマホとの親和性が高いといわれているからです。

 クイックコマース需要拡大の背景には、「忙しい女性が増えた」ことはあるでしょう。ただ、スマホの存在こそが買物に出かけなくてもいい生活の前提で、そこが「出前時代」との大きな違いです。食品小売の品目数は多く、買上点数もそれなりになるので、出前のように電話口で「ラーメン3つ」と言えば済む買物ではありません。

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