ECモール激戦時代を勝ち抜くには? 3本柱からなるパルコのデジタル戦略とは
ECの独自性を高める三つの柱とは?
ただし、競合するECサイトに打ち勝つには、さらなるパワーアップが必要だと、林氏は強調する。同社が、今後のECモールのバージョンアップ計画で打ち出す差別化戦略はズバリ、独自性の強化。その柱は三つある。
一つ目がオリジナル企画。パルコでしか買えない商品、体験できないイベントを増やすことだ。
例えば、人気ゲームキャラクター「スーパーマリオ」とのコラボレーショングッズを21年7月以降、パルコのテナント限定で順次発売した(リアルショップでも購入可能)。商圏内のリアル店舗に、期間限定でECモール出店を募る「ポップアップショップ」という企画もある。また、広島パルコでは、同施設のテナントだけが参加できる、プロ野球チーム「広島東洋カープ」とのタイアップ企画も、独自に実施している。
二つ目が独自メディア。21年9~12月には、プロモーション部と共同でライブコマース「オンライン商店街」という、言わば「ネット催事」を開催し、テナント約30社が参加した。「ECプラットフォームの提供も、動画収録もパルコで引き受け、テナントさんに負担はかけませんでした」(同)。集客力のあるネット催事であれば、テナントも参加するメリットを感じやすいだろう。
約30カ国に顧客がいる渋谷パルコでは約2カ月間の休館を機に、中国向けに「越境ライブコマース」も始めた。ECでの多言語対応も、自社の機能が乏しいテナントにとっては、魅力ある付加価値サービスとなりうる。また、渋谷パルコでは、パルコのECモールとテナントの自社サイトをリンクさせた画像データを「デジタルサイネージ」で表示、在庫状況をリアルタイムで確認しながら、欲しい商品をネットからでも、店頭からでも注文できるという。
三つ目が独自のビッグデータの活用。同社には物販だけでなく、飲食、出版、美術、エンターテインメント(演劇・音楽・映画など)といった、さまざまな事業部門がある。「パルコミュージアムでは、入場券や関連グッズの販売といった取扱高のEC化率が、20年度には30%を超えました」(同)。
そうしたさまざまな事業分野から、カードの購買履歴などの情報を集積すれば、顧客一人ひとりの生活パターンや嗜好が、きめ細かく把握できるわけだ。23年までの3ヵ年中期経営計画では、全事業部門の顧客情報を統合して一元管理し、「特定のアーティストやアニメキャラが好きそうなお客さまには、それらのアーティストやアニメキャラのコラボグッズの売場を案内するといった、“ほかのECサイトではできない販促”も可能になります」(同)。そうすれば、テナントの販売効率アップも期待できそうだ。
ECにおいても、こうした「パルコならでは」の独自機能を磨いていけば、「お客さまからも、テナントさんからも、より強い支持を頂けるショッピングセンターに進化していきたいと考えています」と、林氏は自信を示している。