RaaSモデルに移行!?SMを根幹から変えるU.S.M.HのDX戦略

堀合洋介(実践リテールDX研究会事務局)
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未来型店舗を
今年中にオープン予定

 また、満行氏は次のように続ける。

 「次の10年先も成長し続けられるスーパーマーケットは何だろうか。そこに行き着くために、まずは店舗のデジタル化、顧客体験を改めるべきだと考えた。中途半端なちょっといい商品、ちょっとおいしい商品、ちょっと安い商品ではなく、突き抜けないといけない」(満行氏)。

 つまり、U.S.M.Hはデジタルの力を使いながら、顧客が商品を探し、手に取り、決済するという一連の流れを、顧客それぞれに適したものに変えることに真正面から挑んでいる。

 その一例として挙げられるのが、会計の仕組みを変えた「Scan & Go(スキャン・アンド・ゴー)だ。商品をピックアップしたときにスマホでスキャンし、セルフレジで会計ができるスキャン・アンド・ゴーは、顧客がレジでの手間を減らす仕組みである。これにより、買物客の体験価値を高めるだけでなく、得られた顧客データを使用することで、買物途中に商品の紹介やおすすめの商品を表示できるようにもしている。。

 また、新たに未来型の店舗づくりに挑戦する。

 これまでSMに行くのは「生活必需品を購入する」ことが目的だと一般的に考えられていた。しかし、U.S.M.Hではそれ以外の新たな目的で店舗を利用してほしいとの思いから、自社で「CafeDine(カフェダイン)」というオープンカフェを構想している。独自のブランドを構築し、SMに来店する理由を「食料品を買うため」から、「地域住民が集うため」に変え、そのためのサービスや場所を提供しようとしている。

 また、昨年11月には、植物工場スタートアップのプランテックス(東京都)とパートナーシップを組み、野菜の生産も試みる。そのために独自の野菜ブランド「green growers(グリーン グロワーズ)」もつくった。

 リアル店舗以外でもオンラインショップの「Online Delivery(オンラインデリバリー)」では、ミールキット「eatime chef(イータイムシェフ)」を販売する。このミールキットも自社開発だ。自らが開発することによって、得られた知見を新しい価値提供につなげるべく、自社惣菜や料理教室などへ波及を目論んでいる。オンラインデリバリーでは、自社商品のみならず、「DYK」という新潟県三条市にある高儀のキッチンツールやアイリスオーヤマの製品も取り扱いを始めている。オンライン上でのラインロビングだ。

 いずれも、「顧客体験をまったく新しいモノにする。事業モデルを変革しなければ明日はない」というシンプルで厳格な意思が現れている。しかも、これらはこの12年で起きた変化である。U.S.M.Hはこの1年でもっと進化のスピードを上げていくだろう。

オンラインデリバリー
オンラインデリバリーではミールキット「eatime chef(イータイムシェフ)」も販売する

グループ共通の統合システムを
リリース予定

 今の進行状況について、満行氏は「最終的な完成度を100とすると、まだ10%も進んでいない」と話す。

 U.S.M.H2024年の段階でデジタル領域から得られる収益を200億円、営業利益率5%という数字を目標値としている。その達成に向けてまだ10%も見えていないという状況である。ここでいうデジタル収益とは、システムの外販やデジタル施策の元に創出される売上や広告による収益を対象にしている。

 ただ、これは直線的に上がっていく売上ではなく、曲線的に上がっていくと思われる。機会と環境が整うと一気に変化する可能性がある。

 「今、グループ共通の統合システムを作っているこれが完成すると、U.S.M.HDX戦略も一気に進む」(満行氏)。

 店頭在庫とインターネット上の表示は統合され、過去の購買と紐付き、商品がレコメンドされ、人によって価格も変わる。そもそも商品を探しに店頭に行くわけではなく、商品を受け取りに行ったり、知り合いと話す為だけに足を運んだりする。自分好みのドリンクを飲みながら、映画を見て時間を過ごす。それはわれわれが知っているSMではない。「あらゆる人に食を届ける」ために、10年後も必要とされる存在になるために、意思統一し、本気で手を動かしているのが今のU.S.M.Hといえる。

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