非効率業務を打破しコミュニケーションを高速化させるデジタルを用いた小売業の働き方改革
株式会社セールスフォース・ジャパン
インダストリートランスフォーメーション事業本部
小売消費財業界シニアマネージャー
リテール・ストラテジスト
小川 哲 氏
「Tableau」によりデータ収集・分析を自動化し意思決定を迅速化
多くの小売業においてデータ収集にスプレッドシートでの集計が多かった。買物客が多い土日のデータも集計に手間取るため、週明けに行われる経営会議に間に合わない。さらに集計作業が属人化している場合が多く、その人が退職してしまうと同時にデータ集計ができなくなり再現も困難になる。しかもスプレッドシートでの分析やその結果やデータの共有を手作業でメール配信しているのが実情だ。
また、社内はともかく社外の取引先とのコミュニケーションもメール中心で、挨拶文など形式張ったやりとりでしかも遅い。さらにコミュニケーションツールと日常業務で使うツールが連携していないため、他のツールにログインしなければならず業務が煩雑になっている。よいディスプレーの取り組みや接客の改善などといったナレッジが、個人や特定メンバーでのメールやチャットに留まってしまうという問題も残されている。
こうしたメールやスプレッドシートに頼った状況を打破し、デジタルを活用した新しい働き方を実現するツールをセールスフォースは提供している。分析では「Tableau」を使うことで最新のデータを自動で収集し何か異常値があれば通知してくれる。自動かつ即座にグラフやダッシュボードで可視化することで毎月、毎週の手作業での分析から解放され、土日の売上状況を週明けの経営会議でタイムリーに意思決定に活かすことができる。
コミュニケーションについては「Slack」により社内外とのコミュニケーションを高速化しナレッジの共有が図れる。本部と店舗間ではチャットツールや簡単な音声通話機能を使い平時や災害時、緊急時を問わず、全社横断でオープンにコミュニケーションを活発化しナレッジの共有を図っていく。
デジタルによる新しい働き方は、小売業の商品企画から販売計画・調達・製造・物流、販促とマーケティング、店舗・EC運営、アフターサービスといったバリューチェーンに関わってくる。この中で店舗・EC運営に絞ると、エリアマネージャーやスーパーバイザーが各エリアの数値を確認する部分、各部署から店舗に全社通達・本部指示をする時、お客様の声などをPCやスマホで登録し店舗から本部が収集する、店舗と本部間の問い合わせや修理・修繕の依頼、勤怠管理システムと連携した店舗の中での出退勤の管理、複数の店舗間や店舗内での情報共有などで「Slack」「Tableau」を用いることで業務の効率化が図ることができる。
米国TARGETでは1万人の社員が「Slack」を活用
米国アパレルのアバクロンビー&フィッチでは土日の売上のピークに対して、日曜日に出勤し何時間もかけて売上集計し45ページものレポートをプリントアウトして作成していた。これを「Tableau」によりデータ分析を自動化することで、週40~50時間のレポート作成を4時間に短縮。日曜日の出勤もなくなった。資生堂では、レポート作成をITベンダーに依頼しておりコストや時間も1週間以上かかっていた。「Tableau」によりレポート集計が1週間から数秒に短縮、現場ユーザーへの定着も早く各部門でダッシュボードを使い一般的な分析が可能になった。
米国で約2,000店を展開するターゲットでは、まずIT部門のエンジニア2,000人で「Slack」の活用を開始。使いやすさからデジタル部門、人事部、戦略部門などに展開し、現在は1万人弱の従業員が利用している。コミュニケーションツールにとどまらずボットフレームワークを開発し投稿、FAQ、他のシステムとの情報連携などにも活用している。米国最大の百貨店ノードストロームでは、ECサイトへの出品やPOPを出す場合、外部のクリエーターとの作業やモデルの写真撮影で「Slack」を使い、撮影業務を効率化した。メールや添付データによるコミュニケーションでは作業の遅れやコストも発生するが、「Slack」によりタイムリーな連携を実現し業務効率化を図っている。