2023年に台湾に初出店し、海外進出を果たしたロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)。すでに台湾で3店舗まで店数を増やしている。その1号店で、三井不動産(東京都)の「三井ショッピングパーク ららぽーと台中」(以下、ららぽーと台中)の核店舗として開業した「ロピアLaLaport台中店」(以下、LaLaport台中店)を実際に訪問。現地での店、商品づくりなど、同社の海外市場開拓の取り組みをレポートする。
渋谷の街をイメージした
外観で賑わいを訴求
LaLaport台中店が出店したのは、ららぽーと台中の南館地下1階。基本的な外観は日本と同様だが、「センター街」「109」など渋谷の街をイメージした賑やかな装飾を施すほか、モニターでは日本のテレビ番組でロピアが紹介されている動画を流し、日本で人気の食品スーパーであることをアピールしている。
海外での市場開拓には、現地ニーズに対応した店づくりや商品開発が必要不可欠だ。また、日本産の商品を販売する場合は、輸入コストがかかるぶん、どうしても価格は高くなる。こうしたなかロピアはいかに対応しているのか。2月中旬に実際に店を訪れ、現地で目にした同社の取り組みをレポートする。
総菜と精肉を強化
飲食業態も導入
まずLaLaport台中店は、ショッピングセンターの核店舗ではあるが、店舗規模はロピアのなかではコンパクトなサイズだ。
台湾は、外食文化が強く、そのぶん自宅で料理をする機会が日本と比較して少ない。そうした現地の特性に応じて同店では、青果と鮮魚は品揃えを大胆に絞り込んでいる。一方、持ち帰りができる総菜や、強みとする精肉は売場を大きく割いていた。
店頭で扱う肉や魚を調理し提供する飲食業態を導入しているのも特徴だ。新業態として、焼き肉や肉料理のコースなどを提供する「肉処 肉源」、海鮮丼が中心の「日本橋 魚萬」を店舗に併設。また、日本でも千葉県松戸市の店舗内で営業し予約困難な店として話題になった「肉割烹 黒泉」(完全予約制)も出店している。
日本のSMと遜色ない
味と品質の寿司を提供
売場を実際に見ていくと、国内同様にワンウェイの売場配置で、主通路沿いに青果、鮮魚、総菜、精肉、和洋日配、酒類を配置。売場中央でグロサリーや菓子、冷凍食品などを販売する。
青果では野菜は台湾産を中心とする一方、果物は長野県産シャインマスカット(約5075円:1台湾元=4.7 円換算、以下同)や山梨県産梨(約1730 円)など日本産の高質商品を訴求する。
日本から輸入するぶん価格は高いが、ときに何十個とまとめ買いしていく人もいるそうで、需要は高いという。売場では3種類の果実が少しずつ入ったカットフルーツのパックも用意。シールで産地を訴求し、まずはおいしさを知ってもらうための工夫も行っていた。
鮮魚については、鰻の蒲焼や大粒のホタテなどを冷凍ケース1台で販売するのみで、残りは刺し身と寿司の売場とした。なかでもスペースを割くのが寿司バイキングのコーナーだ。大ぶりのネタを使った寿司を約20種類揃え、従業員が注文を聞きパック詰めする。
価格は「いか」(1貫約188円)、「赤えび」(同約235円)、「ほたて」「いくら」(いずれも同約282円)などで価格はやはりやや高いが、日本のSMの寿司とそん色ない品質と味の商品を提供していた。
現地向けに開発した
ユニークなメニューも
続いて総菜は、基本的に店内調理で提供し、売場から調理風景が見えるようにして出来たて感を訴求。唐揚げや豚かつ、焼き鳥などの肉総菜が中心で、素材には日本産ではなく台湾産の肉を使用することで、比較的、手頃な価格で販売する。
そのほか、丼や弁当、焼き立てピザ(ホール1枚1175 円)なども揃える。店で最も人気のメニューと訴求していたのが「和風豚肉スパゲッティ」(約610円)だ。実際に食べてみると、パスタの麺が和風ベースで味付けされ、スライスニンニクと青のりが効いたメニューで、焼きそばとペペロンチーノを足して2で割ったような味わいだった。日本ではみかけないメニューであり、現地向けに開発し支持を得ているものとみられる。
また、総菜のほかに手作りスイーツも並び、楽しい売場を演出していた。スイートポテトやスコーンのほか、りんご飴(1本465円)をPOPで食べ方を説明しながら販売していた。
なお、売場のPOPやシールは日本語表記が目立つ。これはあえての取り組みのようで、ららぽーと台中の関係者によると、これが逆にユニークで、SNS等で現地の人々にウケているという。
加工肉を店舗で
燻製し販売
強みの精肉については、売場に足を踏み入れると、燻製香が漂ってくる。
売場から見える加工場にはドイツ・フェスマン社の機械が設置されており、どうやら加工肉を店頭で燻製し販売しているようだ。売場導入部ではウインナー、焼き豚、ベーコンなどが並び、「日本湘南工場直伝」というシールを貼ってアピールしている。
売場中央では台湾産の肉も扱うが、日本の和牛を訴求。「山口県産みなもと牛肩ロースステーキ4等級」(1枚188g・2368円)、「鹿児島県産黒毛和牛 焼肉用スライス」(1パック116g・2006円)などを販売していた。
「宮崎県産黒毛和牛 すきやき・しゃぶしゃぶ用」(同266g・約4225円)など、ロピアが得意とする大容量パックも豊富に扱い、見た目にもインパクトの大きい売場づくりを行っていた。訪問時は、大容量パックを購入していく来店客の姿が多く見られた。
精肉は精算時、品質のよい状態で持ち帰ってもらうべく、従業員が氷を袋に詰めて提供する。日本では店頭での氷やドライアイスの提供は当たり前だが、台湾にはそのようなサービスは基本的にないことから、手厚いサービスとして好評を得ているという。
現地メーカーとの
共同開発商品も
洋日配と冷凍食品は台湾産商品を中心に日本製のこだわり商品を混ぜて、グロサリーや菓子、和日配はそのほとんどが日本製の商品だ。
焼肉のたれ「肉たらし」(1本790円)をはじめロピアのオリジナル商品を売場の各所に差し込んでいるほか、グループ会社の機能を生かし、丸越醸造(埼玉県)が製造する調味料や、調達会社ユーラス(神奈川県)によるワインなども扱っていた。とくに焼肉のタレや、調味料類は主通路沿いで大量陳列して訴求していた。
台湾で開発した商品も見られた。酒類売場では、現地で人気の高いクラフトビールブランド「SUNMAI」と共同開発した商品を数量限定で販売している(350㎖・約700円)。
11品の肉料理コースを
約4600円で提供
夜は満席状態!
前述した飲食業態については、「肉処 肉源」「日本橋 魚萬」はそれぞれ10人ほどが座れるカウンター席を設置。来店客の目の前で調理し食事を提供する。
19時頃に店を覗くと、とくに「肉処 肉源」は満席状態。取材時は旧正月明けだったため「CHINESE NEW YEAR」と銘打った肉料理のコースを約4600円で提供していた。先付や前菜から刺し身、焼き物3種、デザートなど11品が楽しめるもので、豪華な内容からお得感のある価格設定だ。まずは、日本産の肉の魅力を知ってもらうねらいがあると考えられる。
完全予約制の「肉割烹 黒泉」については、食品スーパーの出入口の横と、酒類売場の2カ所にひっそりと入口を設置。中に入ると上質で特別感のある食事空間が現れる。
ランチは約1万6450円、ディナーは2万3500円(いずれも+10%のサービス料除く)のコースのみを提供。前出の松戸の店でも総料理長を務めた泉弘樹氏が、台湾と日本の食材を組み合わせた料理を提供している。徐々に認知度も高まっているようで、とくに旧正月期間には予約が多く入っていたという。
和牛と日本の食文化を
発信し海外で成長する
ロピアは19年に、グループの新会社eatopia(イートピア:神奈川県)を立ちあげ、外食事業に参入。日本国内で、前出の「黒泉」のほか、東京・銀座の高級焼き肉店「銀座山科」、東京・小石川のミシュラン1つ星獲得のステーキハウス「小石川中勢以」など、さまざまな肉の飲食業態を手掛けてきた。
この背景には、強みとする精肉を生かして、日本の和牛さらには日本の食文化の発信することで、海外で成長するという同社の戦略がある。
LaLaport台中店での試みは、これまで準備を重ねてきた取り組みの集大成かつ大きな最初の一歩であり、飲食業態も絡めて今後ロピアが海外でどのような成長を描いていくのかにも、注目が集まる。
すでに3店体制
まずは台湾に集中か
ロピアは23年12月には桃園市に「桃園春日店」を、24年2月には新北市に「新北中和店」も出店しすでに台湾で3店舗を展開する。海外でもまずは台湾で、スピードを持って店舗数を増やしていくとみられる。
LaLaport台中店と桃園春日店は公式Instagramも開設し、おすすめ商品やお得な情報などを発信。たとえば桃園春日店での投稿からは、開業時にはロピアのラッピングバスを周辺エリアで走らせたり、店舗で抽選イベントを開催したり、地域の子どもたちの塗り絵を店内に展示したりと、現地での認知度、支持向上のためにさまざまな工夫を行っているようだ。
LaLaport台中店の訪問では、グループ力を生かし柔軟に現地に合わせて店づくりをするロピアの対応力の高さが感じられた。
取材時は平日だったが客足は少なくなく、買物内容を見ると、寿司や総菜、日本の和牛を買っていく人が多く見られ、買物かごがいっぱいになるほどまとめ買いするお客の姿も複数見られた。
ロピアは日本同様に台湾でも支持される存在となれるか、今後の快進撃に期待したい。