9年でわずか25店舗 ブルーボトルコーヒーがあえてスローペース出店を貫く理由

2024/02/15 05:59
堀尾大悟
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「感動ドリブン」の店舗運営がLTVを高める

ブルーボトルコーヒー京都カフェ内観
京都カフェ内観

 「感性」を重視するブルーボトルの判断基準は、店舗運営においても貫かれている。

 「人がカフェを訪れる、お金を払うといったアクションを起こすときには、何かしら心が動いた体験が必ず起点になっている。だから『売上や利益につながるか』より『心が動くかどうか』を重視する」

 バリスタとの会話、窓から差し込む光の入り方、スツールの高さまで。すべては「お客さまにどのような感動を提供するか」を基準に意思決定されている。これもまた、ビジネスのセオリーを無視しているようにも見えるが、「『ビジネスより感動』。この順番を絶対に譲ってはいけない」と、伊藤氏の言葉には迷いがない。

 「『お金』を起点にビジネスモデルを作り、横展開していく手法は、誰もが『これが好き』と思える共通の価値基準があった時代には機能していた。でも、今日では『これが好き』の価値基準がマスから個人へと移ってきている。そういう時代には、個人一人ひとりに『これが好き」と思ってもらえるような『感動』を起点にビジネスモデルを考えたほうが、結果としてビジネス面でも合理的だと考えている」

 事実、日本に初出店してから9年の間に、コロナ禍という危機を経験しながらも、閉鎖した店舗はわずか2店舗だ。それは、店舗ごとに地域の顧客とのコミュニティを、時間をかけて築いてきた証だろう。

 「ビジネスドリブン」より「感動ドリブン」のほうが、短期的なキャッシュフローにはつながらない。が、キャッシュポイントの時間軸は長くなり、LTV(顧客生涯価値)の高い店舗運営ができるということなのだろう。

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