ブランデ、フーコット、@FROZEN… 食品小売が新業態・フォーマット開発を加速する理由
「ストア・オブ・ザ・イヤー2023」の受賞店が出揃った。今回の上位店の顔ぶれから感じるのは、22年は有力チェーンによる新たな業態・フォーマット開発が活発だったということだ。その具体例を紹介するとともに、食品小売店の業態開発のトレンドを解説、分析する(本記事はダイヤモンド・チェーンストアオンライン+会員専用の独自配信記事です)。
ストア・オブ・ザ・イヤーは、1年間で開業・リニューアルした店の中から、これからの店舗開発に影響を与えるような先進的な店を、ユーザー・読者からの投票によって順位を決定、表彰する企画だ。
第36回となる今回は計3つの部門を設け、「店舗部門」では上位20店、「商業集積部門」は上位3店、「専門店部門」は上位5店を発表した(図:店舗部門は上位15店のみ掲載)。
上位にランクインした店舗から見てとれる傾向として、22年は有力チェーンによる新業態・フォーマット開発が進んだ年だったと言えよう。
20年の新型コロナウイルス感染拡大で食品小売業界は一時期、消費行動の激変により混乱に陥った。22年はそれから約2年が経過し、各社これからの業界を勝ち抜くための新業態・フォーマット開発を再び加速させている印象だ。実際にどのような新業態・フォーマットが開発されたのか具体的に紹介していこう。
カスミはBLΛNDEで
出店機会を広げる
まず、22年は有力スーパーが総力を結集させて開発した、食提案型の新業態がオープンした。
代表例が店舗部門2位の「BLΛNDE(ブランデ)研究学園店」(茨城県つくば市)だ。BLΛNDEはユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都)傘下のカスミ(茨城県)が、21年3月から始動した全社プロジェクト「新業態開発プロジェクト」のもと、開発したものだ。同社本社がある茨城県つくば市に1号店の「つくば並木店」を開業。「研究学園店」はその2号店だ。
「全社を活性化させる
“起爆剤”」に
「研究学園店」は、「フードスペシャリティストア」を掲げ、専門性の高い食の集積に挑戦しているのが特徴だ。対面販売の強化や、クッキングスタジオを導入して料理教室を開催するなど、顧客とのコミュニケーションにも注力している。
また、カスミの新しいオリジナルブランド「MiiL KASUMI(ミールカスミ)」の商品を、BLΛNDEの開業段階で一気に約1300SKU投入したほか、会員制プログラム「BLANDEPrime(ブランデ・プライム)」も導入している。
新業態開発のねらいについてカスミの山本慎一郎社長は「現代のライフスタイルに即した新しい店づくりによって、全社を活性化させる“起爆剤”とするため」と説明する。
今後、BLΛNDEで得た成功事例を既存店にも波及していきたい考えで、すでに「MiiL KASUMI」の一部商品は全店で販売しているほか、総菜やベーカリーなどBLΛNDEの商品政策(MD)も新店を中心に少しずつ波及させている。
BLΛNDE3号店の開発も計画にあり、BLΛNDEによって大型商業施設内など既存のフォーマットでは出店できなかった立地での出店機会を広げていきたい考えだ。
商品の仕入れや
配送方法から見直し
そのほか新業態では、店舗部門10位の「ベイシア Foods Park(フーズパーク)大田原店」(栃木県大田原市)がある。フーズパークは、鮮度を追求したベイシア(群馬県)の新業態だ。20年9月に実施した消費者調査において、自社の商品の新鮮さに対する期待が高まっているという結果を受けて、部署横断の改善プロジェクトを発足。生鮮食品の仕入れや配送方法を見直し、そのノウハウを同店に結集させた。
生鮮食品と総菜を中心に、「採れたて」「切りたて」「出来たて」「つきたて」「揚げたて」に注力した売場づくりに取り組み、鮮度と簡便・即食ニーズに対応した店舗をめざしている。
また、店内各所にはデジタルサイネージを設置し、おいしさを伝える取り組みも進めているほか、コロナ禍でのショートタイムショッピング傾向の高まりを踏まえ各売場の規模の適正化にも取り組んだ。
今後の出店は未定だが、ベイシアは同店を軸に一から新たな売場づくり・商品開発に取り組み、 Foods Parkを今後の主力フォーマットに育てていきたい考えだ。
カスミとベイシアに共通する点として、新業態開発を好機に従業員の力を結集して独自商品やMDを進化させ、自社の競争力の底上げにつなげていることがわかる。
次に注目したいのが、有力SMによる価格訴求型フォーマットの開発である
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