カレー市場、簡便や本格ニーズに対応した商品の登場で ルウカレー市場は安定感を維持

文:山田 陽美

少子化や単身・共働き世帯の増加に伴う食卓環境の変化を背景に、ルウカレー市場は長期的に縮小傾向にある。2024年度は価格改定の影響により、金額ベースでは微増となったものの数量ベースでは減少が続いている。

一方、堅調に推移していたレトルトカレー市場もその勢いは鈍化。市場活性化のために、各社による魅力的な新商品の投入が期待されている。

カレー
少子化や単身・共働き世帯の増加に伴う食卓環境の変化を背景に、ルウカレー市場は長期的に縮小傾向にある(i-stock/kazoka30)

時短調理を可能にしたパウダー・ペーストルウが台頭

 KSP-POSデータによると、ルウカレーの期間通算(2024年6月~25年5月)の金額PIは5033円で対前年同期比0.8%増【図表1】、数量PIは21.33で同0.8%減。価格改定の影響により平均単価が上昇し、金額PIでは微増となった。

 少子化や単身・共働き世帯の増加といった食卓環境の変化を背景に、長期的には縮小傾向にあるが、近年は少人数向け商品や簡便調理ニーズに対応した商品の登場により安定した市場となっている。

図表1 ルウカレーの金額PIおよび金額PI対前年推移

 エスビー食品は、溶けやすいパウダールウ商品のラインアップを強化。パウダールウは、固形ルウに比べて油脂や小麦粉の使用が少なく、スパイスの香りや素材本来の旨味が際立つ点が特徴だ。代表的な商品には、赤缶カレー粉をベースに国産素材を使用した「S&B赤缶カレーパウダールウ」や、料理家・栗原はるみさんと共同開発した「栗原はるみ わたしのカレー」。

 そのほか、こだわりのブレンドによるスパイスのおいしさを楽しむ「S&B CRAFTCURRY」、水なしで調理可能な「ドライキーマカレー」、さらに鶏肉、トマト缶、牛乳の3つの素材で手軽につくれる「バターチキンカレー」などがある。パウダールウは固形ルウにはない個性を備え、年々市場での存在感を高めている。

 一方、ハウス食品は、じっくり煮込んで濃縮する技術によって、短い調理時間でも煮込んだおいしさを味わえるペーストルウを開発し、時短調理を可能にした。「バーモントカレーシェフズアレンジ」と「ジャワカレーシェフズアレンジ」の2ブランドを展開している。

 また、近年のスパイスカレーブームを背景に、スパイスにこだわった商品も次々に発売されている。エスビー食品は、24年2月にスパイスが効いた本格カレーを手軽に楽しめる「スパイスプレミアム」3品を発売した。ハウス食品は、スパイスの華やかな香りと旨味を生かした「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」を展開。

 加えて、24年秋冬に期間限定で発売し好評を博した「ホワイトカレー」「ブラックカレー」を通年商品として発売し、さらに、えびの旨味とスパイス香る濃厚でコク深い味わいの「レッドカレー」を新たに発売した。ハウス食品は家庭での“おうちカレー”に彩りと華やかさを演出する新しい選択肢として提案している。

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