専門家が緊急提言! 「食品スーパーの青果部門は、今すぐ全体最適の発想から脱却せよ」
食品スーパー(SM)にとって青果は集客の要であり、店舗においてきわめて重要な役割を担う部門である。しかし青果は天候要因をはじめ産地の状況によって供給、品質、価格(相場)が不安定であり、しかもそれが日々変動するという難しさもある。気候変動が著しい近年は、その複雑さがより顕著だ。
そうしたなか、SMはあらためて青果とどう向き合い、商品政策(MD)を策定すべきなのか。小誌連載「青果売場大改革!」でおなじみのリテール&アグリサポート代表・塩原淳男氏が解説する。
青果部門を苦しめる「全体最適」の仕組み
青果は、天候によって供給量や品質が大きく左右され、かつそれをコントロールするのが難しいという商品特性がある。にもかかわらず、一般的なSMでは、ほかの部門と同様に「品質は一定」「生産はコントロール可能」という前提のもと、「全体最適」の仕組みで運営されている。そのため、青果部門が産地の状況に対応し、流動的な動きをとることを難しくしている。
青果は買い上げ点数が多く、お客に与えるインパクトが大きい部門だ。そのため、ロスリーダー部門と位置づけられ、粗利益率を抑えてでもとにかく安く売ることを求められてきた。しかし、事前に販売計画を組んで価格を決定する「全体最適」の仕組みで運営している限り、計画時に思い描いたような質と価格の訴求はできないままだ。
青果部門を集客装置にするためには、繁盛している専門店や直売所のように、変化に富んでいて、お客に「今日は何があるだろう」と期待感やワクワク感を持たせる売場づくりが必要になる。そのためには、事前に組んだMDに沿うのではなく、生産・仕入れ状況に合わせて、「毎日新鮮」な売場をつくることがポイントとなる。
そこで大事になるのが、旬の演出である。そもそも、青果部門の本来の役割は、「旬」をお客に提案することにある。「どれだけ旬に踏み込んで提案しているか」こそ、青果を取り扱う人のミッションといえる。

旬の素材が大量に収穫されれば、相場は下がる。生産状況に合わせた売場づくりをすれば、結果として、安さも季節感も訴求でき、その時期に最もおいしい旬のものを最も安く、タイムリーにお客に提供できる。
ただ、全体最適の仕組みでこれを実現するのは不可能だ。オーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)やロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)のような成長企業は、青果部門が単独で、産地の生産状況に合わせて動ける仕組みが整っているからこそ、新鮮な売場づくりができている。
商品知識を習得しタイムリーな売場を!
青果部門単独の仕組みづくりにおいて重要な存在となるのが、バイヤーだ。青果部門のバイヤーは本来、商品知識を求められる職種である。しかし、組織上の課題として、日常のルーティーン業務に追われるあまり、最近の青果バイヤーは、商品のおいしさや品質の追求に十分踏み込めていないように見受けられる。
価値ある商品を市場で見つけ出し、タイムリーに売場で展開するためには、商品知識を持ち、産地の状勢や出荷状況の予測をある程度できなければいけない。
近年は、地球温暖化や自然災害の激甚化など気象環境の変化に伴い、日本の農作物の生育状況はこれまで以上に予測が難しくなっている。これを前提として、安定した数量を確保するためには、国内のみならず世界にも目を向け、どのような調達網を持つべきかを考えなければならない。
この観点からも、まずは商品知識を習得し、「将来、生産状況や外部環境はどうなっていくのか」「農産物流通が今直面している課題は何か」といった川上の問題をバイヤーがきちんと把握しておかなければならない。
臨機応変に売場を変更するためには、
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