AI活用にフルコース仕立て…2025年のおせちトレンドを読み解く
コロナ禍の巣ごもり消費で伸長した予約おせち市場ですが、昨シーズンは頭打ち感が出ました。企業によって実績に差はあるものの、富士経済の調べによると国内市場は前年比98.5%といいます。とはいえ、小売チェーンにとっては高単価な商材ですし、通販事業者の台頭もあって予約おせちを巡る競争は激化しており、現代ニーズを取り込もうと各社の商品戦略には活気が見られます。
元旦オードブルの枠を超える?
そもそものおせちは、新年の祈願要素が強い料理でした。重箱に詰める料理には語呂合わせ的な理由がつけられ、無病息災や子孫繁栄などを祈ります。年末までに用意して、元旦は台所を使わずに済ませるという風習から、作り置きできるもので構成されていました。
しかし90年代以降、おせちの意味合いは徐々に変わりました。予約おせち需要が拡大するにつれ、語呂合わせ主体の祈願料理は、元旦のオードブルセットに変貌しました。購入する以上は家庭では作れない味わいが求められるようになり、ホテルや名店などとのコラボが広がり、メニュー的にも和洋中なんでもありになりました。
2025年のおせちスタイルも、基本は元旦オードブルの流れです。その中で毛色が違うのは特化型おせちです。大丸松坂屋百貨店を例に取ると、今年は叙々苑が監修した肉料理特化おせちを商品化しました。また、おつまみに特化したおせちでは、料理ごとに合わせて飲みたい酒類を提示します。そのバリエーションで、ワインに特化したおつまみおせちも開発しています。
肉料理特化のほか、スイーツ特化、ペット用おせちなどは、多くの企業が商品化しています。肉特化はもはやメーン料理の領域であり、スイーツ特化は食後のデザートです。松屋銀座は名店コラボの「ensia.フレンチおせち四段重」で、前菜・主菜・デザートのフルコース仕立てのお重を開発しました。元旦オードブルの枠を越えることが、おせち進化の一つの方向性かもしれません。