バイヤー教育の本質は、「PDCAサイクル」の意識づけである

文:塩原淳男
構成:上林 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

食品スーパー(SM)の青果部門から多く聞かれるのが、「バイヤー教育」の方法だ。新人バイヤーを育成するために、部門として、または企業全体として何が必要なのか。今SMに求められる、バイヤー教育のための体制づくりについて解説しよう。

自社のコンセプトが教育の基盤に

 最近はよく、SM各社から「バイヤーの教育をしてほしい」と依頼を受けることがある。しかし抽象的な依頼内容であることも多く、そうしたSMほど、企業の軸となるコンセプトが定まっていない傾向にある。

 バイヤー教育において最初に考えるべきなのは、店づくり・売場づくりをどの方向で進めていくかだ。よく「ワクワクするお店をつくる」といった抽象的なスローガンを耳にするが、それが示すのが価格政策なのか、品揃えの方向性なのか、または社員の行動規範なのか、現場へ具体的に落とし込めていないケースが多い。

青果売場
どの商品が主役で、どの商品が脇役となるのかを決めておくと計画が立てやすくなる(写真はいずれもイメージ)

 会社として掲げたコンセプトが不明確なままバイヤー教育を進めても、教える内容が定まらない。たとえば、自社が「安さ」を追求するのか、「価値」を重視するのかで、仕入れる商品も教えるスキルも変わってくる。コンセプトを現場の業務に具体的に落とし込むことで、各部門がめざすべき売場像が見えてくる。これができて初めて、バイヤー教育の枠組みをつくったことになる。

 私がかつて在籍していたSMでは、「個店経営・全員参加」の方針のもとで売場を運営していた。これは経営手法であると同時に、教育の考え方でもあった。社員一人ひとりが考え、行動し、全員でお客のニーズに応える。そうした会社の基盤となるコンセプトがあり、現場に落とし込めていたからこそ、各部門で何をどのように取り組むのかがはっきりしていた。だからその会社では、バイヤーを育成できる環境が整っていた。

バイヤーの仕事は「人を動かすこと」

 また、企業によってはバイヤー教育の一環で外部のセミナーを受講させるケースもあるようだ。しかし、

この記事でわかることは

  • 会社のコンセプトを明確に定め、その方針に沿った具体的な商品選定やスキルを身につけるための教育を実施している。

  • 受発注作業などのルーティン業務を効率化し、バイヤーが産地とのコミュニケーションや商品開発といった本来の仕事に注力できる環境を整えている。

  • 部長クラスが新人教育の責任者となり、新人自身に計画を立てさせて実践と検証を繰り返すことで、自ら考え改善する力を育てている。

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構成

上林 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

2000年生まれ。埼玉県出身。法政大学文学部英文学科卒業後、地方新聞社の営業職を経て株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。

流通小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部で執筆・編集を行う。

趣味はお笑い鑑賞、音楽鑑賞。一番好きなアーティストは椎名林檎。

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