西友の新PB戦略 NBベンチマーク型から独自の価値持つブランドへ飛躍できる理由!

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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PBカレーは16種類 一番人気はタイカレーの1つ

 さて、小売業のPBが良くも悪くも店頭を席巻しているのは、熾烈な「棚割り獲得競争」とは無縁だからだ。そうは言っても、売れるか売れないかわからない新奇性の高い商品は在庫リスクが高いため、開発しにくい。結局は、マーケットボリュームの見込めるNBを模倣した、ベンチマーク型PBの開発がメーンとなる。

 西友でも当初はベンチマーク型PBの開発が主軸だったというが、消費者の声を生かした商品開発を数多く進めていくなかで、徐々に「『みなさまのお墨付き』がベンチマークPBの殻を破り始め、お客さまの支持を得られるエッジの効いた商品を開発できるようになった」と木下氏は述懐する。

 その際たる例が、レトルトカレーシリーズだ。14年に4種類のレトルトカレーを発売して以来、150円という低価格で本格的なエスニックカレーが楽しめるとあって、PBにおける人気ナンバーワンカテゴリーとなっている。最も人気なのが、タイカレーの1つマッサマンカレー。「当初はお客さまに馴染みのないカレーだったが、今では西友のレトルトカレーカテゴリーで常に上位にある」(商品開発部の河合梨沙氏)。

西友のPB

コロナ禍で4つの切り口で商品開発

 そうしたなか、西友ではコロナ禍における消費者ニーズの変化として、巣篭もり・在宅による調理負担の増加と、生活防衛意識の高まりに対応した商品開発を進めることで、さらなるPBの拡大をめざす。

 具体的には、1Stay Home、2Quick & Easy、3Healthy4Guilt free4つの切り口で開発を進める。このうちQuick & Easyでは、女性をターゲットに小盛りのご飯の上にかけるだで、ガパオやユッケジャンなど家庭では作るのに手間がかかるメニューを手軽に楽しめる「On the ごはんシリーズ」を発売。4Guilt freeでは、コロナ禍で菓子カテゴリーが慎重する中、罪悪感を感じずにお菓子を楽しめるよう、食物繊維を含有させた糖質オフのお菓子を開発。NBにはないフレーバーも投入する。

 西友では商品開発のスピードも加速させ、20年の1000アイテムから、22年までに2000アイテムに増やし、グロサリーの構成比20%をめざす考えだ。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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