mitoriz(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約40万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1000万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる。(提携サイト含める)
このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。
連載第14回は、神奈川県を中心に関東エリアを地盤とするOIC グループ(神奈川県/髙木勇輔代表)のロピア(同)にクローズアップ。 関東に留まらず、全国主要都市や台湾にまで商勢圏を広げるなど最も成長著しい食品スーパーの1つと言える。同社はなぜ消費者に支持されるのか、その要因を消費者アンケートとレシート購買データにより明らかにしていく。
支持する理由「安さ」の
スコアはオーケー、
トライアルの方が高い
まずは「ロピア」と戦略が類似するチェーンを含めて比較対象を選び、それぞれのメーン利用者に各チェーンを「支持する理由」を尋ねた。(調査期間:2024年4月19日~4月30日、N=ロピア103人、イオン456人、オーケー447人、ライフ416人、トライアル83人)。(図表1)
アンケート調査の結果、「ロピア」は「安いから(88.3%)」「品揃えが良い(64.1%)」「いつも利用しているから(54.4%)」「セール・特売商品が多い(50.5%)」「店員の接客が良い(41.7%)」の順に支持されていた。
その他チェーンと比較するとロピアの特徴が浮かび上がってくる。
「安いから(88.3%)」のスコアの高さは、「オーケー」「トライアル」に続く3番目だ。しかし同社は安さのイメージが強い。
購買データを見ると、メーン利用者の家族構成は3人以上が6割を占めておりファミリー世帯が中心だ。かつ、アンケート項目の「大容量商品が豊富」が5チェーン総計よりも9.9ポイント(pt)も高い。これらの結果から、ファミリー世帯に大容量商品の豊富に提供できている点が、安さを訴求できている要因の1つと考えられる。
精肉を中心に生鮮の
支持の高さ際立つ
さらに、総計と比べて「鮮魚の種類が豊富(+6.9Pt)」「生鮮品の品質がよい(+4.4Pt)」などの項目が高かった。とくに「精肉の種類が豊富(+20.0Pt)」は、ロピアが精肉店として創業したこともあり他チェーンと比べても飛び抜けて評価されている。
実際にメーン利用者からも「ロピアはお肉や魚が美味しくて安いし、色々な種類がある」「近隣スーパーよりも肉や魚、総菜の種類が豊富」「価格が安くまとめ買いに良い」との声が目立った。
逆にスコアが低い項目は?
一方、総計と比べてスコアが下回っていた項目が「立地(-20.3Pt)」「ポイントやオトクなサービスがある(-16.8Pt)」「一か所で何でもそろう(-9.7Pt)」「店の雰囲気が良い(-3.8Pt)」などだ。
「店舗が少し遠い」や「通路幅が狭く通れない」「周辺道路が渋滞し駐車場が満車状態」といった施設の環境面のほか、「ポイントを利用できるようにしてもらいたい」「今どきキャッシュレス決済に全く対応していないのは不便」「不便なので他スーパーを利用するようになった」との不満の声も聞かれた。
そんななか、「現金払いしか出来ないが生鮮の価格と品質は大満足」「不便だけど安い方がいいから仕方ない」などの意見が挙がっており、ウイークポイントを上回る強さの発揮により、来店を獲得しているようだ。
群を抜く生鮮食品の
レシート単価の高さ
次に23年3月~2024年4月までのレシートデータを分析し、カテゴリー別の購入状況を各チェーンで比較した。(図表2)。
カテゴリーごとに平均単価を分析した結果、「ロピア」の1枚当たりのレシート平均単価は、5項目中3項目で最も高くなった。とくに「生鮮食品」は比較チェーンによっては450円以上の差をつけ抜きんでていることから、生鮮食品が中心となって購入される傾向が示されている。前出の「価格が安くまとめ買いに良い」との声については、とくに生鮮食品が支持され、まとめ買いされる傾向にあると考えられる。
価格と提案力で
満足度の総合評価1位
続いて各チェーンの利用者ごとに「満足度調査」を下記8項目で行った。(図表3)
その結果、8項目中6個が上位3位以内に入り、平均では最も高い満足度を獲得していた。
ロピア全体では「6.商品の価格(安さ)(90.3%)」が最も満足度のスコアが高く、「オーケー(94.0%)」を下回るものの、同じく低価格戦略をとる「トライアル(89.2%)」を僅差で抑えた。
また、価格だけではなく、「1.生鮮食品の品質」や「4.商品の品質」「2.商品力・オリジナリティ」などの項目が「イオン」や「ライフ」といった提案型食品スーパーと同等に評価を得ていることにも注目したい。
商品の買い付けやプライベートブランド商品の開発は、一般的に本部のマーチャンダイザーが担うが、ロピアでは各売場のチーフが自ら買い付けや販売価格の決定まで行う「事業部制」を採用している。生鮮の専門性の高さに加えて、このように現場責任者が裁量を持つことで現場の意見や顧客志向が品揃えに反映されている点が、提案力の部分でも評価を得ていると考えれる。
またOICグループは、積極的なM&A(合併と買収)と事業の多角化により、食品スーパーだけではなく、製造業や飲食事業、輸出入業を展開する企業をグループ傘下に持つ。これらグループ企業の機能を活用することで、質の高い独自性のある商品を低価格で提供できることも、総合的な満足度に高さに寄与しているとみられる。
以上の調査結果からロピアは、「現場主義×製造小売」で独自の価値を生み出し、「価格の安さ」だけでなく「提案力」も発揮することで、支持を得ていることがわかった。
「2031年までにグループ売上2兆円」を掲げるロピア。今後のますますの躍進に期待したい。
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