お腹がゴロゴロしにくい!「A2ミルク」は業界の切り札となるか?
A2ミルクの品質をどう担保するか
日本A2ミルク協会の参画企業は、いわゆる「メガファーム」と呼ばれる大規模農場3社ほどを除きほとんどが100~200頭規模の小規模酪農家だ。厳しい状況におかれた酪農家からは、「A2ミルク」の展開を焦る声も聞かれる。認証制度の枠外で、既に比較的安価なA2ミルクが流通している現状もある。
しかし吉田氏は、「酪農業全体を元気にしていくためには、トレーサビリティも含め『A2ミルク』の品質を担保し、価格がやや高めだとしても『健やかに安心して飲める』という価値を、ブランドとして確立すべき」と強調する。
2021年、オーストリアで「発売されたA2ミルクの5つのサンプルのうち4つから、A1型のβカゼインが検出された」 という事象が報告された。生乳を出荷する2軒の酪農家のうち1軒で、A1型の牛が混在する牛群から搾乳が行われていたのだ。
これを受けて日本A2ミルク協会は、牛の遺伝子検査だけでなくA2牛乳の真贋を適切に判定できる検査体制を整えた。乳牛の遺伝子検査はもちろんのこと、東京農業大学と重井医学研究所が共同開発した検査キットを用いて生乳のタンパク質βカゼインも検査できるようにした。生産、運送、加工のそれぞれの段階でA1型のミルクが混入することのないよう、作業ごとの仕分けチェックシステムを整備し、監査委員会による厳重なチェック体制も確立。協会独自の審査・監査体制が不足している工程については、現状、「農場HACCP認証」「JGAP認証」「ISO22000認証」のいずれかの取得を必須としている。
これら厳しい基準をパスした牛乳だけが、認証マーク付きの「A2ミルク」となる。「『A2ミルク』を切り札にするには、エビデンスが不可欠。安心して飲んでもらうには、A2ミルクへのA1ミルクの混入はあってはならないこと」(吉田氏)。高いハードルがあるからこそ、品質とブランド力が担保され、「価値」がお客さまに伝わる。吉田氏は、「ブランド構築には強い使命感を持って取り組んでいる」と語る。
「A2ミルク」は酪農業界の救世主となるか。商品発売まで漕ぎつけた今、「扉をノックしてようやく開いたところにいる。認証マークの意味をご理解いただいた上で、ぜひともオールジャパンで多くの酪農家や乳業メーカーに認証を取得していただきたい」(吉田氏)。